芥川龍之介作品を題材にした新作オペラ《note to a friend》が2023年1月上演
デヴィッド・ラング、笈田ヨシらが作品を語る

 東京文化会館とジャパン・ソサエティー(ニューヨーク)の共同制作プロジェクト第2弾となる新作オペラ《note to a friend》が、2023年2月4日と5日、2日間にわたって東京文化会館で日本初演される。8月19日、オンライン会見が行われ、作曲と台本を手がけるデヴィッド・ラングがニューヨークから、演出の笈田ヨシがニューヨークから参加した。

 今回の作品は、東京文化会館の舞台芸術創造事業として、ジャパン・ソサエティーと国際共同で委嘱されるオペラ。芥川龍之介の『或旧友へ送る手記』と『点鬼簿』を題材とし、2023年1月12日〜15日にジャパン・ソサエティーで世界初演された後、2月に東京文化会館小ホールで上演される。
 同プロジェクト第1弾は、夏目漱石の『夢十夜』が原作、長田原が作曲と台本を担当したオペラ《Four Nights of Dream》で、2017年9月〜10月にニューヨークおよび東京で上演された。台本・作曲が日本人、演出家がアメリカ人という前回の組み合わせを逆転させ、今回はデヴィッド・ラングが作品・台本を、笈田ヨシが演出を手がけ、歌手と弦楽四重奏のための約60分の新作が仕上がった。

デヴィッド・ラング (c)Peter Serling

 ニューヨーク在住のラングは、ソロ・アンサンブル作品にとどまらず、新作オペラや声楽作品など幅広く手がけることで知られる。2007年、バッハの「マタイ受難曲」をベースとした代表作「マッチ売りの少女の受難曲」は、2008年にピューリッツァー音楽賞、2010年にグラミー賞の『Best Small Ensemble Performance』部門を受賞した。
 10代の頃に芥川龍之介作品に出会ったというラングは、芥川による死の手記の要素と晩年の作品を基に書き上げた今作について以下のように語った。
「15歳の時に『羅生門』を読んで以来、芥川作品のファンでした。《note to a friend》では、自分にとって衝撃を受けた『或旧友へ送る手記』と、『点鬼簿』『藪の中』、これら3つの異なる物語を題材にして、自分の言葉で、自分の視点を持って、“死との対話”を描きたいと考えました。また、今回の企画は、アメリカと日本をつなぐプロジェクトです。私はアメリカの大学で教鞭をとっていますが、若い音楽家が参加することは非常に意義深いと思っています」

笈田ヨシ (c)Sébastien Coindre

 笈田は、演出家および俳優として、パリを拠点に世界各地の劇場で活躍。1990年代末から、ヨーロッパでオペラ演出に携わり、パリ・オペラ・コミック座、リヨン歌劇場、英国国立オペラ、トロント歌劇場、ルクセンブルグ歌劇場等で新演出の委嘱作品を手がけてきた。日本では、2017年《蝶々夫人》が初めてのオペラ演出となり、2019年には新国立劇場の新作オペラ《紫苑物語》(西村朗作曲、大野和士指揮)も演出している。
「デヴィッドと一緒に仕事をできることが、大変楽しみです。私の目的は、音楽や台本を通して、どうやって人生を語ることができるか、人間を語ることができるかというところです。人間の美しさ、悲しさ、寂しさ、面白さ…人間であることのドラマを音楽を通じて表現したいと考えています。日本人だけが理解するようなオペラではなく、ニューヨークに限らず、パリに限らず、人間がどう生きるかということを考えられる作品になればと思っています」

セオ・ブレックマン (c)Lynne Harty

 演奏は、ドイツ出身で現在ニューヨークを中心に活躍するジャズ・ヴォーカリスト、セオ・ブレックマンほか、第1ヴァイオリンの成田達輝(ニューヨーク公演は小川響子)、第2ヴァイオリンの関朋岳、ヴィオラの田原綾子、チェロの上村文乃といった東京音楽コンクール入賞者が揃う。歌手1名と弦楽四重奏という編成に加え、黙役を担当するのはサイラス・モシュレフィ。美術・衣裳・照明は、笈田演出オペラ《蝶々夫人》(東京芸術劇場 他)、《紫苑物語》(新国立劇場)など、長年にわたり笈田と仕事をしてきたトム・シェンクが手がける。

東京文化会館 舞台芸術創造事業
ジャパン・ソサエティー(ニューヨーク)との国際共同委嘱による新作オペラ
note to a friend》(日本初演)〈全1幕・原語(英語)上演・日本語字幕付〉
2023.2/4(土)、2/5(日)各日15:00 東京文化会館(小)

作曲・台本:デヴィッド・ラング
演出:笈田ヨシ

東京文化会館
https://www.t-bunka.jp