古楽実験工房プロデュース 《はじめての古楽器!》

新世代の感性が導く、自由で刺激的な音楽体験

 ぶらあぼの読者に「古楽がはじめて」という方は、あまりいないかもしれない。けれど筆者が「はじめて古楽のスピリットに触れた」と感じたのは、柴田俊幸に出会ってからだった。ベルギーを拠点に活動するフラウト・トラヴェルソ奏者であり、今回の《はじめての古楽器!》をプロデュースする古楽実験工房の仕掛人である柴田が一貫して提案するのが「古くて新しい古楽」。21世紀におけるHIP(Historically Informed Performance practice=歴史的情報に基づく演奏法)はロマン派にまで拡大するどころか、柴田が芸術監督を務めるたかまつ国際古楽祭ではフリージャズや雅楽までもが「古楽」としてプログラムされていた。「クラシックが再現芸術になる前の時代のように、その場で音楽を作ることができる音楽家が集まって即興的に生み出されるのが古楽」と柴田は語る。

 《はじめての古楽器!》にも、それができる音楽家が集結している。笙の演奏家であり雅楽芸人としても活動するカニササレアヤコ、柴田と同様にピリオドとモダンのフルートを演奏する一方でハーディ・ガーディ奏者としても活動する野崎真弥、チェンバロ奏者でありながら歌も披露する山下実季奈。ハイブリッドな感性を持つ彼らが、18世紀フランスのオトテールやドラヴィーニュから、J.S.バッハ、モーツァルト、はたまた「エレクトリカルパレード」まで、縦横無尽に古楽の世界を案内する約70分。「はじめて」ならずとも必聴だ。
文:原典子
(ぶらあぼ2022年9月号より)

2022.9/25(日)14:00 三鷹市芸術文化センター 風のホール
問:三鷹市スポーツと文化財団0422-47-5122 
https://mitaka-sportsandculture.or.jp