フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022

この夏、国内最大級のオーケストラの祭典で堪能する熱きハーモニー

(c)青柳聡

 今年も「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 」が7月23日から8月11日にかけて開催される。「夏、ジャ〜ン♪」を合言葉に全19公演のラインナップが組まれた。中心となるのはプロ・オーケストラの競演。首都圏のオーケストラに加えて、今回は大阪フィルがゲストに招かれる。

(c)青柳聡

 オープニングコンサート(7/23)とフィナーレコンサート(8/11)に出演するのはミューザ川崎シンフォニーホールを本拠地とするホスト・オーケストラ、東京交響楽団。音楽監督ジョナサン・ノットがシェーンフィールドの「4つのパラブル」(ピアノ:中野翔太)、ストラヴィンスキーの「エボニー協奏曲」(クラリネット:谷口英治)やラヴェルの「ラ・ヴァルス」他のカラフルなプログラムで開幕を飾る。フィナーレコンサートでは正指揮者の原田慶太楼が登場。コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲(独奏:岡本誠司)、武満徹の「3つの映画音楽」、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」組曲の抜粋他が並べられ、こちらも凝ったプログラムが目をひく。

2021年 オープニングコンサート (c)青柳 聡
2021年 フィナーレコンサートのプレトーク (c)青柳 聡

創立50周年に祝う
楽団ゆかりの作曲家生誕90年

 神奈川フィルは大植英次の指揮で、バーンスタインの組曲「キャンディード」、ディヴェルティメント、バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」より〈シンフォニック・ダンス〉、ストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲(1919年版)他のプログラムを組んだ(7/28)。バーンスタインは大植にとっての恩師。作曲家バーンスタインの魅力を存分に伝えてくれることだろう。

 読響は井上道義とともに登場、ハイドンの交響曲第45番「告別」とブルックナーの絶筆となった交響曲第9番(ノヴァーク版)を組み合わせる(7/29)。2024年末をもって引退すると発表したマエストロのメッセージがこもったプログラムだ。

 N響を指揮するのは下野竜也。三浦文彰の独奏によるブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番、ベートーヴェンの交響曲第7番他が演奏される(7/30)。本格派のドイツ音楽プログラムがオーケストラを聴く喜びを約束する。

 都響は首席客演指揮者アラン・ギルバートを指揮台に招き、プロコフィエフの「古典交響曲」、ビゼーの「アルルの女」より抜粋、ラフマニノフの「交響的舞曲」を披露する(8/2)。都響の緻密なアンサンブルとゴージャスなサウンドを楽しめるはず。

 ユニークなプログラムを組んだのは創立50周年の新日本フィル。今年生誕90年を迎える楽団ゆかりの作曲家、山本直純を特集する(8/3)。広上淳一の指揮により交響譚詩「シンフォニック・バラード」、児童合唱とオーケストラのための組曲「えんそく」抜粋、NHK大河ドラマ『武田信玄』テーマ曲など、その並外れた多才に焦点をあてる。

 東京シティ・フィルは昨年急逝したジャズの巨匠チック・コリアの「スペイン〜六重奏とオーケストラのための」をとりあげる(8/4)。故人と親交の深かったリチャード・ストルツマンの独奏によるコープランドのクラリネット協奏曲も聴きもの。指揮は首席客演指揮者の藤岡幸夫。レスピーギの交響詩「ローマの松」では絢爛たる音の饗宴がくりひろげられるだろう。

関西を代表するオーケストラが初登場!

 関西の雄、大阪フィルは尾高忠明音楽監督とともに、イリヤ・ラシュコフスキーの独奏によるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、エルガーの交響曲第1番を聴かせる(8/5)。エルガーはマエストロ尾高の十八番。大阪フィルの重厚なサウンドが熱いパッションを作品に注ぎ込む。

 東京フィルは久しぶりに桂冠指揮者ダン・エッティンガーとともにやってくる。リムスキー゠コルサコフの交響組曲「シェエラザード」でめくるめくアラビアンナイトの世界へと誘う(8/7)。華麗で色彩感豊かなサウンドを堪能したい。気鋭、服部百音によるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲も楽しみだ。

 日本フィルは現田茂夫の指揮で、今もっとも注目されるソプラノ森谷真理によるR.シュトラウス「4つの最後の歌」、ブラームスの交響曲第1番他のドイツ音楽プログラムは聴きごたえ十分(8/10)。

 これらオーケストラ公演以外にも、小川典子の名物企画「イッツ・ア・ピアノワールド」(7/31)や、小川典子とイリヤ・ラシュコフスキーの2台ピアノによるストラヴィンスキー「春の祭典」とラフマニノフ「交響的舞曲」(7/31)、ジャン=フィリップ・メルカールトのオルガンによる恒例企画「真夏のバッハ」(7/24)、ストルツマンら名プレイヤーたちがチック・コリアを演奏する「サマーナイト・ジャズ」(8/6)など、ラインナップはもりだくさんだ。

 また、今年も映像配信が行われる。ミューザ川崎シンフォニーホールでの公演はすべてライブ配信とアーカイブ配信が提供され、お得なおまとめ券も販売されている。コロナ禍で一躍広まった映像配信だが、その利便性は決して一時的なものではない。演奏会に足を運びにくい人々や首都圏以外の音楽ファンにとって、映像配信は音楽の楽しみを深めてくれる心強い味方だ。熱心なファンにとっては「あの公演をもう一度聴きたい」という願望をかなえてくれる貴重な手段でもある。さらにバックステージの様子や出演者インタビューなど、配信でしか見られないコンテンツが用意されるのもうれしい。

 会場でのリアルな体験とオンラインでのリモート鑑賞。どちらの感動も本物だ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年7月号より)

オンラインでも楽しめるサマーミューザ

●オンライン鑑賞券
詳細https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/ticket/ticket_online.php
申込ミューザWebチケット http://muza.pia.jp チケットぴあ https://t.pia.jp

●サマーミューザ2022特集ページ
ジョナサン・ノットのインタビュー記事ほか掲載中!
https://ebravo.jp/special/featured/summermuza2022

オーケストラ公演
1公演500〜1500円で視聴可能。
お得な全19公演おまとめ券
12000円で見放題。
アーカイブ配信は8月末まで。

2021年の配信の様子はミューザ公式YouTubeでご覧ください。


【information】
フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022
2022.7/23(土)〜8/11(木・祝)

ミューザ川崎シンフォニーホール、昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワ【配信あり】
問:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200

https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。