来日中のファビオ・ルイージが記者会見

 2022年9月よりNHK交響楽団の首席指揮者に就任するファビオ・ルイージの記者会見が、5月24日都内で行われた。

 ルイージは、フィラデルフィア管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団などに客演、またメトロポリタン歌劇場首席指揮者、ドレスデン国立歌劇場とチューリヒ歌劇場では音楽総監督を務めるなどオペラ指揮者としても活躍している。ルイージとN響の初共演は、2001年7月に遡る。以来、N響が得意とするブラームス、ブルックナー、ベートーヴェンといった重厚なドイツ音楽を中心に、8回の共演を重ねてきた。楽員からも楽曲に対する明晰な解釈や指揮ぶりに高い評価の声があり、N響の桂冠名誉指揮者サヴァリッシュの薫陶を受けたルイージがドイツ音楽の伝統と、N響の100年近い歴史で育んできたサウンドの継承を期待されている。任期は3年。

 会見でルイージは、次のようにコメントした。

「私が首席指揮者に選ばれて大変嬉しく思っています。N響は魅力的なオーケストラ、自分が初めて東京に来る前からの憧れでした。それは、自分が敬愛する指揮者が多く客演しているからで、なかでもサヴァリッシュは、自分のキャリアを助けてくれただけでなくメンターでありロールモデル。音楽家としても人間としても尊敬しています」

「今後、N響と新たな伝統を作っていきたいと考えています。R.シュトラウス、ブルックナー、ヴェルディのレクイエム(9/10の就任記念公演で取り上げる)などの後期ロマン派の作品は自分にとっても中心的なレパートリー。これらが新たなN響との伝統を作っていくことに繋がるのではないかと考えています」

 またN響では、2023年12月に2000回目の定期公演を迎える(ちなみに1986年の第1000回定期公演は、サヴァリッシュが指揮している)。この日のプログラムはN響ファンが投票で選ぶことに決まった。候補は以下の3曲。

(1)フランツ・シュミット/オラトリオ「7つの封印の書」
(2)マーラー/交響曲 第8番 「千人の交響曲」
(3)シューマン/「楽園とペリ」

 これらの曲に関してルイージは、
「このプロジェクトはお客さまも参加できてとても良いと思います。コロナ禍で、無観客の時とお客さまがいる時といかに違うかを痛感しました。お客さまがいるからこそ本当の演奏になるのです。この3曲はそれぞれ違うテイストで、シュミットは20世紀で最も重要なオラトリオと言っても過言ではない傑作です。また、同じようにほとんど演奏されることのないシューマンも大変美しい曲。マーラーは有名ですが、大きな編成になるため上演の機会は少ないですね。自分だったらどの曲を選ぶかは言わないでおきます。投票に影響してしまったらいけないから(笑)結果がとても楽しみです」

 詳しくは後日N響ホームページで紹介される予定。

 コロナ禍の制限も少しずつ緩和され、海外との往来もようやく光が見え始めてきた。このタイミングにおけるルイージのポスト就任はさらに明るい気持ちにしてくれる。若返りが進むN響と彼がどのような「新しい歴史」を創っていくのか、まずは9月の就任記念公演を楽しみに待ちたい。

公演情報
NHK交響楽団 &ファビオ・ルイージ 首席指揮者就任記念
2022.9/10(土)18:00、11(日)14:00 NHKホール
出演
指揮:ファビオ・ルイージ
ソプラノ:ヒブラ・ゲルズマーワ
メゾソプラノ:オレシア・ペトロヴァ
テノール:ルネ・バルベラ
バス:ヨン・グァンチョル
合唱:新国立劇場合唱団
プログラム
ヴェルディ/レクイエム

9/16(金)19:30、17(土)14:00 NHKホール
出演
指揮:ファビオ・ルイージ
オーボエ:エヴァ・スタイナー
プログラム
R.シュトラウス/交響詩「ドン・フアン」op.20
R.シュトラウス/オーボエ協奏曲 ニ長調
R.シュトラウス/歌劇「ばらの騎士」組曲

9/21(水)19:00、22(木)19:00 サントリーホール
出演

指揮:ファビオ・ルイージ
ヴァイオリン:ジェームズ・エーネス
プログラム
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
ブラームス/交響曲 第2番 ニ長調 op.73

問:N響ガイド03-5793-8161
https://www.nhkso.or.jp