セバスティアン・ヴァイグレ(指揮) 読売日本交響楽団

聴き手を刺激するマエストロ渾身のプログラム

セバスティアン・ヴァイグレ (c)読響

 コロナの波を幾度もかいくぐって来日を果たし、読響との関係をより深めたセバスティアン・ヴァイグレ。その常任指揮者が、来る初夏の指揮台に立つ。

 曲目は、ルディ・シュテファンの「管弦楽のための音楽」とブルックナーの交響曲第7番(ノヴァーク版)。思えば、ヴァイグレが常任指揮者となって最初の演奏会で取り上げたのは、ヘンツェ(7つのボレロ)とブルックナー(第9番)。ブルックナーの交響曲に、ドイツの表現主義音楽を組み合わせ、聴き手の新たな聴覚を掘り起こす。ヴァイグレにとっての勝負プログラムだ。

 シュテファンは、近年再評価が高まってきた20世紀初頭のドイツの作曲家。R.シュトラウスの次世代を担う存在として将来を嘱望されていたが、第一次世界大戦に従軍、戦場(現ウクライナ)で命を落とす。28歳の若さだった。この「管弦楽のための音楽」は、彼の出世作で、シューリヒトやチェリビダッケといった指揮者による録音も残されている。華麗かつ色彩的なオーケストレーションが持ち味で、熟れきったロマン派の趣きも。ヴァイグレならではの油彩を思わせる強い音色に魅了されること間違いない。

 短い時間のなかに一曲の交響曲を思わせる起伏を凝縮したシュテファン作品のあとは、悠然とした流れをもつブルックナーの大曲が続く。力みや虚勢は一切なく、柔らかにして骨太の響きがもたらす堂々たる存在感。そして、細やかにそれぞれの主題を描きつつ、ダイナミックな頂点を築いてくれるはずだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2022年6月号より)

第618回 定期演奏会
2022.6/21(火)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp