東京二期会 宮本亞門演出&ヴァイグレ指揮で《パルジファル》上演

 東京二期会が7月、セバスティアン・ヴァイグレ指揮、宮本亞門演出によるワーグナー最後の大作《パルジファル》を新制作で上演する。東京二期会として《パルジファル》の公演は、二期会創立60周年記念公演以来10年ぶり、2021年から3か年にわたる「二期会創立70周年記念公演シリーズ」の中でも頂点となるプロダクションだ。

 タイトルロールの福井敬、アムフォルタス黒田博、クリングゾル友清崇、そして、クンドリ橋爪ゆか、田崎尚美と2012年の公演で大役を果たしたキャストが再登場を果たすほか、若手テノール伊藤達人が初タイトルロールに抜擢され、昨年2月《タンホイザー》ヴォルフラムを好演し期待を高める清水勇磨がアムフォルタスで出演を予定している。

上段左より:福井敬、黒田博、友清崇、伊藤達人
下段左より:橋爪ゆか、田崎尚美、清水勇磨 (C)井村重人

 指揮は、読売日本交響楽団常任指揮者、フランクフルト歌劇場音楽総監督で、ワーグナーの聖地バイロイト音楽祭にも度々登場してきたセバスティアン・ヴァイグレ。東京二期会では読響とともに、《ばらの騎士》(2017)、《サロメ》(2019)、《タンホイザー》(2021)で絶賛を博してきた。
 この6月には読響公演に登場し、ムソルグスキー(ラヴェル編)の「展覧会の絵」、ドヴォルザーク「交響曲第8番」、ブルックナー「交響曲第7番」(ノヴァーク版)、ベートーヴェン「交響曲第7番」、ワーグナー《さまよえるオランダ人》序曲など4プログラム5公演の指揮を予定している。そして、今回の来日を締めくくるように、東京二期会にて《パルジファル》を披露する。

左:セバスティアン・ヴァイグレ (C)読響 右:宮本亞門

 演出の宮本亞門と東京二期会との協働は、2002年《フィガロの結婚》から始まった。今年、20周年にして8作目を迎えることとなり、かつてない規模のプロダクションとなる。13年オーストリア・リンツ州立劇場《魔笛》で欧州オペラ演出デビューを果たした宮本は、18年フランス国立ラン歌劇場《金閣寺》でも大成功をおさめ、続く2020年、同歌劇場にて、自身初のワーグナー作品として今回の《パルジファル》を手掛けた。今は亡き、当時のラン歌劇場総裁エヴァ・クライニッツ氏から熱い願いとともにこのオファーを受けたことは、こちら(ぶらあぼ2021年9月号より)のインタビューに詳しい。

 クライニッツ氏から「闇と光を両方知っているあなたのような演出家に、西洋的でない論法で《パルジファル》をやって欲しい」と言われたと語る宮本。果たして、その舞台は、西洋の歴史や宗教観に収まらない新鮮な世界観を見せるものとして賞賛された。

《パルジファル》フランス国立ラン歌劇場公演より(C)Klara Beck

 「昔からのしきたりや戦争などで苦しんでいる人たちの霊が、浄化されずにたまっている場所として描きました。過去の人生のあり方について苦しんでいる人たちが、共にお互いを思ったことによって、雲が晴れていくような美しい音楽になっていく・・・」と宮本。確かに、このオペラは、パルジファルが、クンドリの、そしてアムフォルタスの苦しみを深く理解することによって、彼らを救済していくという物語だ。しかし、今なお、現実にも戦禍に苦しむ人、古い慣習に縛られている人がいる。そうした人々を、〈私たち〉が救うためには・・・。《パルジファル》が上演される意味は、今、ますます深い。

■福井敬(パルジファル)からのメッセージ
この作品はワーグナー最終期のオペラであり、旋律とドラマが究極の高みを臨むものである。10年前、二期会創立60周年記念のオペラとして題名役を歌わせて頂いた時は、当時の皇太子殿下、今の天皇陛下が、ワーグナーの主要なオペラの中で《パルジファル》だけは、まだ御覧になっていなかったということで御観覧の上、終演後お話しをさせて頂いた事を思い出します。
そして今、聖槍で突かれた癒えぬ傷を持つアンフォルタスは、コロナ禍で踠き続ける世界の様と、正に共振するのではないでしょうか? 二期会創立70周年の年に《パルジファル》を上演することは“必然”なのかも知れません。
今後、何処からか“聖なる愚者”が現れるのか? もしかすると宮本亞門氏の創り出す、今回のオペラの中に答えが見つかるかも知れません。

■伊藤達人(パルジファル)からのメッセージ
2012年の二期会《パルジファル》を観客の1人として観ていた私は、まさかいつか自分がパルジファルを歌うとは思ってもいませんでした。
公演へ向けて率直な心境は、ワクワクが90%、不安が10%です。私にとって初の大役、心の底からワクワクしております。ですがパルジファルとしての求められる声には今の自分は早いかもしれない、そう言った不安がないわけではありません。
7月には100%のワクワクで皆様の前に立てるよう、役と向き合って稽古していきたいと思います。

Information】
《二期会創立70周年記念公演》フランス国立ラン歌劇場との共同制作公演
東京二期会オペラ劇場 パルジファル〈新制作〉


2022.7/13(水)17:00、7/14(木)14:00、7/16(土)14:00、7/17(日)14:00 東京文化会館


演出:宮本亞門

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
管弦楽:読売日本交響楽団

出演
アムフォルタス:黒田 博(7/13, 7/16) 清水勇磨(7/14, 7/17)
ティトゥレル:大塚博章(7/13, 7/16) 清水宏樹(7/14, 7/17)
グルネマンツ:加藤宏隆(7/13, 7/16) 山下浩司(7/14, 7/17)
パルジファル:福井 敬(7/13, 7/16) 伊藤達人(7/14, 7/17)
クリングゾル:門間信樹(7/13, 7/16) 友清 崇(7/14, 7/17)
クンドリ:田崎尚美(7/13, 7/16) 橋爪ゆか(7/14, 7/17)
第1の聖杯の騎士:西岡慎介(7/13, 7/16) 新海康仁(7/14, 7/17)
第2の聖杯の騎士:杉浦隆大(7/13, 7/16) 狩野賢一(7/14, 7/17)
4人の小姓:清野友香莉(7/13, 7/16) 宮地江奈(7/14, 7/17)
      郷家暁子(7/13, 7/16) 川合ひとみ(7/14, 7/17)
      櫻井 淳(7/13, 7/16) 高柳 圭(7/14, 7/17)
      伊藤 潤(7/13, 7/16) 相山潤平(7/14, 7/17)
花の乙女たち:清野友香莉(7/13, 7/16) 宮地江奈(7/14, 7/17)
       梶田真未(7/13, 7/16) 松永知史(7/14, 7/17)
       鈴木麻里子(7/13, 7/16) 杉山由紀(7/14, 7/17)
       斉藤園子(7/13, 7/16) 雨笠佳奈(7/14, 7/17)
       郷家暁子(7/13, 7/16) 川合ひとみ(7/14, 7/17)
       増田弥生(7/13, 7/16) 小林紗季子(7/14, 7/17)
天上からの声:増田弥生(7/13, 7/16) 小林紗季子(7/14, 7/17)
合唱:二期会合唱団

問:二期会チケットセンター03-3796-1831
http://www.nikikai.net
http://www.nikikai.net/lineup/parsifal2022/