マルセロ・ゴメス (アメリカン・バレエ・シアター プリンシパル)

ずっと前から踊りたかったザ・スワン。 待ちきれないほど興奮しています!

(C)瀬戸秀美

(C)瀬戸秀美

 優雅で気品あふれる王子やセクシーで情熱的な色男、さらには妖しい悪魔まで、異なる役柄を鮮やかに踊りこなすマルセロ・ゴメス。今年2月、所属するアメリカン・バレエ・シアターが来日した際には『くるみ割り人形』の王子と、『マノン』のデ・グリューを演じ、端正な踊りで日本のファンを魅了した。そんなゴメスが次に挑戦するのは、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』。古典とは異なり、男性が白鳥を踊るという異色の演出で、迫力ある野生的な踊りと細やかな心理描写が見どころとなっている作品だ。
「マシュー・ボーンの『白鳥の湖』を最初に観たのは確かロンドン公演のとき。観客としてあれほど舞台の世界にどっぷり浸ってしまったことはなかったと記憶しています。劇場を出た後、歩きながら“マシュー・ボーンといつか一緒に仕事をしたい”と強く感じたことを覚えています」
 ゴメスが演じるのは古典版のオデットとオディールに相当するザ・スワンとザ・ストレンジャーの2役。母親に愛されずに育った、孤独な王子が憧れる理想の存在としてザ・スワンが描かれており、その姿は雄雄しく、力強く、自由そのもの。王宮での息の詰まるような生活と仕事に忙殺される毎日を送り、自分の居場所がないと感じている王子とは対照的な存在だ。
「これまで古典の『白鳥の湖』の王子として何度も舞台に立ってきましたが、マシュー版の『白鳥』は、王子とザ・スワンの2つのキャラクターがしっかりと描かれている点が興味深いですね。この作品では、ザ・スワンがまるで天使のように登場し、王子を救います。従来の『白鳥』にはあまり描かれることのなかったふたりの強い精神的な結びつきが描かれているのがとても魅力的です。スワンはただ単に白鳥の衣裳をつけた男たちというものではなく、危険で妖しい生き物として描かれています。人間に対する反応や鳥としての描き方にもリアリティがあるんです。初めて観たとき、このスワンの動きに驚き、すっかり魅了されました。力強くダンサブルな動きにマシューの手腕を感じますね。ストーリーの組み立ても素晴らしい。とても美しい舞台です。僕が好きなシーンのひとつは、第4幕の、スワンの群舞に襲われる王子をザ・スワンが救う場面。あのシーンには深く感動させられますね。役作りに関してはこれからリハーサルを重ねる中で、マシューと話し合いながら探っていきたいと思っていますが、僕ならではのザ・スワンとザ・ストレンジャーになるよう作りこんでいきますので、楽しみにしていてくださいね!」
 近年、ゴメスは振付にも挑戦し才能を開花させているが、同じ振付家としてマシュー・ボーンの作品をとても興味深く感じているという。
「マシューの作品はどれも大好きですね。次にどうなるかわからない展開など、物語の創作にマシューの持って生まれた才能を感じます。『白鳥の湖』はもちろん『眠れる森の美女』など、19世紀の古典的な作品をマシューは彼特有のテイストを織り交ぜて21世紀の作品に変身させてしまうのです。今回の『白鳥の湖』も、物語と音楽の調和が素晴らしい。チャイコフスキーの音楽も感動的だし、心揺さぶられますね。時代を超えた名作だと思います」
 マシュー・ボーンと一緒に仕事をするのは今回が初めてというゴメス。すでに3月にはロンドンでリハーサルをしてきたという。
「とても順調に進みましたよ! 3日間集中的にレッスンしたおかげで身体つきも少し変わってきました。いい気分です! マシューと今まで一緒に仕事をしたことはないですが、スムーズに共同作業できると確信しています。ザ・スワンについては、ほんの少しだけ僕のテイストを混ぜてもらうかもしれないけれどね(笑)。この制作に関わっている振付家やダンサーたちすべてを尊重しているし、ともによい舞台を創り上げていきたいと思っています。このザ・スワンを踊ることはずっと前からの僕の夢だったんですよ。今回、念願かなってとても興奮しているし、早くこの幻想的な深みのあるキャラクターを演じたい。正直、舞台が待ちきれないほどです! 観客のみなさんと一緒に素敵な時間を共有できることを楽しみにしています」
取材・文/石村紀子
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)

マシュー・ボーンの『白鳥の湖』
演出・振付/マシュー・ボーン
音楽/チャイコフスキー
出演/マルセロ・ゴメス(ザ・スワン/ザ・ストレンジャー)
9/6(土)〜9/21(日) 東急シアターオーブ
問:ローソンチケット 0570-000-407
  キョードー東京 0570-550-799
http://l-tike.com/classic/swanlake/