新音楽監督を迎える充実の創立20周年イヤー
愛知県立芸術大学出身の若手奏者を中心に誕生した愛知室内オーケストラ(ACO)は創立20周年に当たる2022年4月、指揮者の山下一史を初代の音楽監督に迎える。同時に定期演奏会をAとBの2系統各11公演に分け、会場を三井住友海上しらかわホールで一本化した。山下はそれぞれを4回ずつ指揮、かつてカラヤンの薫陶を受け自身も主軸とみなすドイツ音楽── A定期ではベートーヴェン、シューベルト、シューマンなど、B定期では2回にわたり「オール R.シュトラウス・プログラム」を取り上げ、還暦の円熟を披露する。
客演指揮者も多彩。A定期には鈴木秀美、アンドレアス・オッテンザマー、大山平一郎、高関健、ユベール・スダーン、太田弦、十束尚宏、B定期には広上淳一、アレクサンダー・リープライヒ、坂入健司郎、原田慶太楼らが登場する。鈴木のオール・ハイドン、ベルリン・フィル首席クラリネット奏者オッテンザマー弟の指揮デビュー、十束のシェーンベルクとシュレーカー、坂入による山内雅弘の「オーボエ協奏曲」世界初演(独奏は客演首席奏者の山本直人)など、選曲もマニアックだ。
また、B定期では2021年7月からACOの「弦楽器アドヴァイザー」を務める川本嘉子(ヴィオラ)をフィーチャーした「ソリスト川本嘉子シリーズ」、ベルリン・フィルの主要メンバーを迎えた「ACO meets BPOシリーズ」、楽員ソリストが光る「コンチェルタンテ・シリーズ」など、演奏家を前面に立てたユニークなプログラミングも売りものだ。
内外のスター級ソリストも、実は随所に散りばめられている。ピアノではデジュー・ラーンキ、ホアキン・アチュカロ、田村響、河村尚子。ヴァイオリンでは堀正文、竹澤恭子。ヴィオラでは川本に加え、アミハイ・グロス。管楽器はソフィー・デルヴォー(ファゴット)、マチュー・デュフォー(フルート)、福川伸陽(ホルン)、ヨウコ・ハルヤンネ(トランペット)、アンサンブル・ウィーン=ベルリン。さらに打楽器で植松透、安江佐和子(客演首席)。高関が定期で取り上げるラトヴィアの作曲家ペトリス・ヴァスクスの作品には、ラトヴィア放送合唱団もゲスト出演する。
特別演奏会では東京混声合唱団との「東混シリーズ」Vol.2を兼ねて2022年12月14日、愛知県芸術劇場コンサートホールで行う創立20周年記念公演のひとつ、山下指揮のヴェルディ「レクイエム」が目を引く。森谷真理(ソプラノ)、中島郁子(メゾソプラノ)、福井敬(テノール)、黒田博(バリトン)と独唱者も豪華だ。ACOの新時代を象徴する熱演に期待しよう。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2022年1月号より)
問:愛知室内オーケストラ事務局052-211-9895
https://www.ac-orchestra.com
※各プログラム、年間会員券、チケット発売情報などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。