審査委員が語る“コンクール”との向き合い方
2022年5月16日〜5月22日、よこすか芸術劇場(横須賀芸術劇場 大劇場)で第9回野島 稔・よこすかピアノコンクールが開催される。同コンクールは、横須賀市制100周年を記念して2006年に横須賀市出身で世界的ピアニストの野島稔を迎え、隔年で開催されてきた。野島は、1969年に開催された第3回ヴァン・クライヴァーン国際ピアノ・コンクールで第2位入賞後、翌年カーネギーホールでデビューリサイタルを開催、その後、長年にわたり国際的な活動を続け、現在は東京音楽大学の学長を務めている。その野島が審査委員長、東誠三、伊藤恵、上野真ら3人のピアニストと、音楽評論家で桐朋学園大学の学長の梅津時比古が審査委員を務める。
11月3日、野島をはじめとする5名の審査委員が集い、ヨコスカ・ベイサイド・ポケット(小劇場)で、コンクールのプレ・イベントと記者発表が行われた。第1部では、上野、東、伊藤がコンクールにおいて思い出深い曲の演奏を披露し、エピソードを紹介。第2部では、「“コンクール”との向き合い方」をテーマに5人による充実した座談会が行われた。
第2部で司会進行を務めた梅津は、このコンクールの特長を以下のように紹介した。
- 第1回からベートーヴェンのソナタの全楽章演奏を課題にしている。ベートーヴェンのソナタであれば課題が発表されてから取り組むというのではなく、普段から勉強していて自分が受けたいときに参加できる。
- 予選から大劇場が使える。予選と本選でホールが違うと響きが異なり音楽の作り方も変わってきてしまうが、そういう心配が不要。
- 審査委員の先生と面談ができる。(ファイナリストは表彰式以降、それ以外の方は第2次予選以降)
- ファイナリストはコンクール終了後に審査委員のレッスンを受けることができる。
さらに今回から聴衆賞を設け、多様な観点を賞として反映させるという。
ベートーヴェンの全楽章演奏について、野島は次のように話す。
「初期も含めてどのソナタも緩徐楽章は、革進的要素を含んでいるので大変難しい。それに取り組むことで、コンテスタントにとっては一生の栄養になると確信しています。そのような理由で、第1回から全楽章演奏を課題としているのです」
そして他の3人の審査委員も、自身のコンクールでの経験や考えを次のように語った。
東「様々な人との出会いがとても貴重です。コンクールの期間は『同じ釜の飯を食う』という感じになるんです。最初はコンテスタント同士よそよそしくしていても、少し経つといろいろ話すようになって。すごく濃い時間なんです。何十年も経ってから再会しても、すぐにあの時に帰ってしまう。素晴らしい体験でした」
上野「オルレアンのコンクールに出たときには、素晴らしい審査員の先生と出会えました。ここにいらっしゃる野島先生をはじめ、ダン・タイ・ソンさんやヴィルサラーゼさんなど、この方に聴いていただきたいという先生ばかりで、コンクールに参加したことによって得られた貴重な財産です」
伊藤「コンクールは良い面、良くない面もあるとは思うのですが、私は自分の生徒には受けるように進めています。目標を持って大きなプログラムを作るということは若いうちは修行になるんです。そして何より舞台で弾くことで大きく成長することができるのです」
応募は11月3日からスタートし、締め切りは2022年3月18日まで。コンクールは全日程を無料で一般公開する。
第9回野島 稔・よこすかピアノコンクール
2022.5/16(月)〜5/22(日)
第1次予選:5/16(月)〜5/18(水)
第2次予選:5/19(木)〜5/20(金)
本選・表彰式:5/22(日)
会場:よこすか芸術劇場(横須賀芸術劇場 大劇場)
横須賀芸術劇場
https://www.yokosuka-arts.or.jp