角田鋼亮(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

楽都ウィーンにちなむ傑作にスポットを当てて

 気鋭の指揮者、角田鋼亮が日本フィルの定期演奏会に初登場し、意欲的なプログラムに取り組む。角田は現在、セントラル愛知交響楽団の常任指揮者を務め、同楽団でも凝ったプログラムの演奏会をひらいている。

 日本フィルの11月の定期演奏会では「ウィーン」をテーマに、19世紀後半から20世紀前半に書かれた音楽が取り上げられる。注目はフランツ・シュミットの交響曲第4番。シュミットはウィーン音楽院の院長を務めるなど、20世紀前半のウィーンの音楽界の重鎮的存在だった。無調音楽の嵐が吹き荒れた20世紀前半においては保守的とのレッテルを貼られたが、いま聴き直すと、決して古臭くない。とりわけ、晩年に書かれた45分に及ぶ単一楽章の交響曲第4番は、半音階が多用され、調性感が曖昧になる箇所もあり、近年ルイージ&サイトウ・キネン・オーケストラやヴァイグレ&読売日本交響楽団が演奏するなど、再評価の気運が高まっている。

 そのほか、神童と騒がれ、ナチスから逃れるためにウィーンからアメリカに渡り、ハリウッドの映画音楽で名声を博したコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲も取り上げられる。映画音楽を思わせるような部分もある聴きやすい名作。ヴァイオリン独奏を務める郷古廉は、ウィーンで学んだ次代を担う期待の星。演奏会の最初には、J.シュトラウスIIの名曲、ワルツ「ウィーンの森の物語」を同地の民族楽器であるツィター(独奏:河野直人)を交えて聴く。
文:山田治生
(ぶらあぼ2021年11月号より)

第735回 東京定期演奏会〈秋季〉
2021.11/5(金)19:00、11/6(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://japanphil.or.jp