アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

画家ボスの傑作にインスパイアされた自作曲を初めて指揮

 指揮者としての実力は衆目の認めるところだが、この2021シーズンには作曲家としての知られざる一面も見せるアンドレア・バッティストーニ。11月の東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会では彼の書いた「フルート協奏曲」(2019)が日本初演される。

 この作品のサブタイトルは〈『快楽の園』〜ボスの絵画作品によせて〉だが、これはマドリードのプラド美術館に所蔵される初期フランドル派の巨匠ヒエロニムス・ボスの傑作のこと。奇想の画家と呼ばれるボスによる祭壇画で、外面には天地創造の時の地球が描かれ、それが開かれると、聖書に基づくエピソードに加え、木の根の形をした人間、耳の戦車など、我々の想像を超えたリアル、グロテスク、かつ甘美な世界が展開される。

 鋭敏なバッティストーニがこの傑作からどんなメッセージを受け取ったのか? それは作品を聴くまで分からないが、バッティストーニ作品をこれまでも演奏してきたイタリアの若手フルート奏者トンマーゾ・ベンチョリーニ(同曲の昨年3月ベルリン初演も担当)がソロを担当し、しかもバッティストーニ自身がこの曲を指揮するのも初めてということで、作品の魅力がより豊かに伝えられるだろう。後半にはチャイコフスキーの傑作「交響曲第5番」が置かれ、マエストロのドラマティックな音楽作りが炸裂する。彼の様々な才能を知るコンサートとなるだろう。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2021年11月号より)

第960回 サントリー定期シリーズ 
2021.11/1(月)19:00 サントリーホール
第961回 オーチャード定期演奏会
11/3(水・祝)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第142回 東京オペラシティ定期シリーズ
11/4(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
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