【CD】アルペジョーネ・ソナタ/田原綾子&實川風

この10年、多彩な活動を重ねてきた田原綾子が、愛奏曲を中心に初のアルバムを作成。シューベルトの名作、コダーイやエネスクの愛すべき小曲など、“歌う”ヴィオラの魅力を心ゆくまで味わえる選曲と演奏。そこに挟まれる西村朗作品では、ハイテンションな技巧で作曲家の精神的な世界観を顕し、器楽的な意味でのヴィオラの可能性も拡大する。どの曲も深くつややかな音色がすばらしく、なかでもシューベルトの緩徐楽章は出色の演奏で、實川風の清らかなピアノも相まって、改めてなんと美しい曲なのかと陶然とさせられた。10年でその域に達した田原の貴重な記録となった。  
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年5月号より)

【information】
CD『アルペジョーネ・ソナタ/田原綾子&實川風』

シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ/西村朗:無伴奏ヴィオラ・ソナタ第2番「C線のマントラ」/コダーイ:アダージョ/エネスク:演奏会用小品/フォーレ:夢のあとに/シャミナード(クライスラー編):スペインのセレナード

田原綾子(ヴィオラ)
實川風(ピアノ)

オクタヴィア・レコード
OVCL-00911 ¥3520(税込) 


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。