ヴィオラ・ダ・ガンバの黄金期はまぎれもなく17世紀だ、と実感させる一枚である。イタリア、イングランド、フランス、ボヘミア、ドイツ、オランダ、(編曲だが)スペインと、欧州各地のガンバ芸術のエッセンスを俯瞰する。形式も変奏曲、舞曲、ソナタと多彩だ。小池香織の演奏は各国のスタイルを厳格に描き分けるより、粗削りなまでの表現意欲で、17世紀バロック音楽に共通する自由な発想と情念の表出を描き切ろうという強い意志を感じる。曽根田駿のバロック・ハープがその熱を程よく中和する。作者不詳だがブクステフーデ作とも推測される「ソロ」はまさにこの時代の“幻想様式”そのもの。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2026年6月号より)
【information】
CD『17世紀のヴィオラ・ダ・ガンバ音楽/小池香織』
ロニョーニ:「スザンナはある日」によるディミニューション/シンプソン:グラウンドによるディヴィジョン/フィンガー:ソナタ第2番/シェンク:ソナタ第11番「時と芸術の修練」 他
小池香織(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
曽根田駿(バロック・ハープ)
コジマ録音
ALM-1231 ¥3300(税込)


