結成10周年を迎えた日本屈指の辣腕トリオによる『ベートーヴェン:ピアノ・トリオ全集』の完結編。まずは、楽聖の当分野唯一の短調曲・第3番、到達点たる名作「大公」、初期のレアな変奏曲が並ぶ変化に富んだ組み合わせが興味深い。演奏も聴き応え十分。第3番は生気漲る清新な快演で、中でも第1、4楽章の溌剌たる進行に魅せられる。「大公」は、スケールの大きさと細やかさ、滋味深さが共生した名演。第2、4楽章の弾みが特に印象的だし、全体に秋元のニュアンス豊かなピアノが光っている。最後の変奏曲も真摯な好演。ピアノ三重奏の魅力に溢れたお薦め盤。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2026年6月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン:ピアノ・トリオ全集(III)/葵トリオ』
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第3番、ピアノ三重奏曲第7番「大公」、ディッタースドルフの主題による14の変奏曲
葵トリオ
【秋元孝介(ピアノ) 小川響子(ヴァイオリン) 伊東裕(チェロ)】
ナミ・レコード
WWCC-8048 ¥3300(税込)

柴田克彦 Katsuhiko Shibata
福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。


