梯剛之のリサイタル・ライブ。梯のピアノのタッチは、洗練されていてとてもきれい。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第10番の冒頭から、繊細な表情が美しく、すこぶる魅力的だ。展開部の小ドラマも表現のアクセントとなっている。緩徐楽章の変奏も味がある。諧謔味をもったフィナーレも愉快だ。バッハのイタリア協奏曲の両端楽章は、対位法の声部の絡みをじっくりと聴かせてくれる。ブラームス晩年のインテルメッツォでは、第1曲のほのかな憧れや、第3曲の行きつ戻りつする内省の表情が胸を打つ。ドビュッシーは無邪気な子どもらしさの中に、遊び心や皮肉を交えて、独特の感覚を楽しませてくれる。
文:横原千史
(ぶらあぼ2026年6月号より)

【information】
CD『梯 剛之 ピアノ・リサイタル2025』
モーツァルト:ロンド K.485/J.S.バッハ:イタリア協奏曲/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第10番/ブラームス:3つの間奏曲/ドビュッシー:子供の領分
梯剛之(ピアノ)
収録:2025年10月、東京文化会館(小)(ライブ)
Sonare Records
SONARE1073 ¥2640(税込)
