INTERVIEW 鈴木舞(ヴァイオリン)&懸田貴嗣(チェロ)――豪華メンバーで聴く“バッハ三昧”!

左:鈴木 舞
右:懸田貴嗣

 上質なバッハの名曲を心ゆくまで味わうコンサート。「The J.S.バッハ演奏会」は、まさにその理想の場を提供し続けているシリーズだ。もとはクリスマス・コンサートとして2018年にサントリーホール ブルーローズでスタートしたが、2022年からは会場を大ホールに移し、以来多くの観客にバッハの神髄を届けてきた。第1回からの中心メンバーであるチェロ奏者の懸田貴嗣と、今回コンサートマスターを務める鈴木舞に公演の魅力をきいた。

懸田「以前は『ブランデンブルク協奏曲』の全曲を演奏していましたが、会場が大ホールに移ってからはせっかくのパイプオルガンを生かし、プログラム前半で多彩な演目を聴いていただくようになりました。オルガンの大木麻理さんとトランペットの佐藤友紀さんのお二人には前々回から演奏していただいています」

 懸田が強調するのはなんといってもメンバーの豪華さだ。

懸田「今回チェロには、ミュンヘン国際音楽コンクール優勝者の佐藤晴真君に参加してもらいます。コンマスもこれまで豊嶋泰嗣さん、松田理奈さんといった実力ある方々をお招きしてきました」

 鈴木もまた多くのコンクールで優勝・入賞を重ね、国際的に活動する注目のヴァイオリニストだ。

鈴木「とにかくメンバーが素晴らしく、全員がトップを担える方々。勢いのある演奏になると思います。バッハは、以前ベルリン・フィルの『マタイ受難曲』を聴いたのですが、秩序の中で情熱をもって語りかける音楽を感じました。今回の公演でも奏者間の対話を重視したいです」

 結集したメンバーは、古楽とモダンの多様なバックグラウンドをもつ個性豊かな奏者たちだ。奏法の統一などはどのようにしているのか、両様式に通じた懸田に尋ねたところ、「近年は垣根を越えて柔軟に演奏する人が増えています。今回も、ノン・ヴィブラートで、などと決めたりはしていません」とのこと。鈴木もかつてフォルテピアノの川口成彦と共演した経験があり、その際に多くを学んだという。なにより初回からの常連メンバーである懸田とチェンバロの西山まりえが通奏低音奏者としてアンサンブルを支えていることで、他の奏者たちは安心して自由な表現を繰り広げられるのだろう。「様々な実力者たちが集まるので、われわれもどうなるか分からない(笑)。その『一期一会』の演奏を楽しんでいただければ」と懸田は語る。

 またとない豪華メンバーによるバッハの名曲と演奏の妙技を愉しめる演奏会。これは大いに期待できそうだ。

取材・文:近松博郎

(ぶらあぼ2025年12月号より)

THE J.S.バッハ演奏会
2026.2/21(土)14:00 サントリーホール
問:ムジカキアラ03-6431-8186
https://www.musicachiara.com