5月10日(日)に開幕する新国立劇場の新制作オペラ、ヴェルディ《椿姫》。去る4月12日(日)にキャスト・スタッフがあつまり、本格的な稽古が始まりました。
こちらでは、稽古初日に行われた演出家のコンセプト説明、そして、それに続く第1幕の稽古の様子をお伝えします。
(コンセプト説明撮影:J.Otsuka/TokyoMDE 稽古シーン撮影:寺司正彦 写真提供:新国立劇場)
稽古場に集まったスタッフ・キャストが互いに挨拶。中央が演出・衣裳のヴァンサン・ブサール。右隣はムーブメントディレクターのヘルゲ・レトーニャ、一番右に演出助手のヴィクトリア・デュアメル。
衣裳デザイン画や舞台セットプランを見せながら、演出コンセプトを説明。演出全体について「真実と美しさが共存しているような舞台。シンプルでありながらも、そのなかに真実が見える舞台、にしたい」と言います。ヴァンサン・ブサールの考える《椿姫》そして、ヴェルディがこの作品で描こうとしたのは・・・
「椿姫のなかには、ヴェルディの個人的な、私小説的な、もしくは自伝的な意味で、社会から認められない女性、愛人という形が個人的な経験として出ているのではないかと考えています。デュマ・フィスによる原作小説をはじめ、戯曲やオペラ、それぞれに出てくる主人公は実際に1840年代に、パリの社交界に生き、娼婦という世界で女王となった女性です。そしてまた、悦楽の都としてのサロンを開花した女性と考えている。女性の自由と個人の尊厳を開花させた女性でもあります。近代女性の象徴として当時活躍した女性がパリにはたくさんいた。
ヴェルディは当時の世界観を、舞台という鏡を使って、同時代の現代劇として世界にアピールしようと考えたのだと思います。ただそれはあまりにも時代を先取りしたものだった。
ヴェルディが同時代性、近代性を意識したように、今回のわれわれのプロダクションでも、現在のわれわれの同時代性とを意識し表現していきたいと思っている。
衣裳は、男性のものは1840年代くらいの、当時のものを反映するようにしていますが、女性のものについては、ちょっとファンタジー、空想といいますか、いろいろなイマジネーション、の中で作り上げたものです」そして、より具体的な説明に移ります。
「【第1幕:ヴィオレッタの宮殿】は悦楽の殿堂のようなものです。文化の最先端という言い方をしていいと思いますが、そういう場所が第1幕です。
ヴェルディのなかでは、悦楽の殿堂、というのは当時文化の最先端であり、劇場だった。文化人が集い、文化の最先端としての劇場の中では、舞台だけでなくそれを見に集まっている人間がいる。劇場のロビーが最先端の文化の発祥地になっていたと考えます。原作の主人公なども劇場に行くと、まるで主役女優が登場するかのようにロビーに入って行って、そのことが話題になったというのが当時の文化的、風俗的状況ではなかっただろうか、そういった状況を今回の公演では復元したいと思っています」
「一番重要なのは、全幕全景に置かれているピアノ。原作に出てくる主人公はリストの愛人だったり、芸術をとても愛した女性。ですから、ピアノは彼女自身の象徴。最終的には、いろんなものを売って何もかもなくしてしまっても彼女の象徴としてピアノがあり、ピアノ自体も死というものを表現して、最終的に死までピアノを持ち込む。ですから、どの場でもピアノがおかれているのです」
稽古が始まりました!
【第1幕から】
中央)ヴァンサン・ブサール 奥)アントニオ・ポーリ 手前)ベルナルダ・ボブロ左から)山下牧子、鹿野由之、ベルナルダ・ボブロ、アントニオ・ポーリ、小原啓楼
■新国立劇場2014/2015シーズン
ヴェルディ/オペラ《椿姫》
La Traviata/Giuseppe Verdi
全3幕〈イタリア語上演/字幕付〉
2015年5月10日(日)14:00 13日(水)14:00 16日(土)14:00 19日(火)19:00 23日(土)14:00 26日(火)14:00
オペラパレス
【指揮】イヴ・アベル
【演出・衣裳】ヴァンサン・ブサール
【美術】ヴァンサン・ルメール
【ムーブメントディレクター】ヘルゲ・レトーニャ
【ヴィオレッタ】ベルナルダ・ボブロ
【アルフレード】アントニオ・ポーリ
【ジェルモン】アルフレード・ダザ
【フローラ】山下牧子
【ガストン子爵】小原啓楼
【ドゥフォール男爵】須藤慎吾
【ドビニー侯爵】北川辰彦
【医師グランヴィル】鹿野由之
【アンニーナ】与田朝子
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
S27,000円 A21,600円 B15,120円 C8,640円 D5,400円
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999