毎年、桜咲く季節の東京の音楽シーンを華やかに彩る、「東京・春・音楽祭」。10月29日、東京文化会館にて2025年の概要発表会見が行われ、同音楽祭実行委員長の鈴木幸一の他、佐藤禎一(副実行委員長)、芦田尚子(事務局長)、藤原誠(東京国立博物館館長・上野の山文化ゾーン連絡協議会会長)が登壇した。
東京文化会館を中心とした上野の各施設で、オペラ、室内楽、リサイタルなど幅広いコンサートを多数開催する東京春祭。2005年に「東京のオペラの森」としてスタート、09年の現名称への改称を経て、今年20周年を迎えた。2025年は、3月14日から4月20日まで約40日間にわたり、およそ80の有料公演を予定している。実行委員長の鈴木は、「20年の歩みを経て、世界的にも知られる音楽祭になってきたと考えています。2026年の5月からは東京文化会館が休館に入るなど、多難も予想される中ではありますが、21年目では永続的な発展に向けた第一歩を踏み出すことができれば」と意気込みを示した。
目玉となるオペラ公演(演奏会形式)は3演目。音楽祭の“顔”、「ワーグナー・シリーズ」は、おなじみマレク・ヤノフスキ(指揮)&NHK交響楽団のコンビによる《パルジファル》。「プッチーニ・シリーズ」にはボローニャ歌劇場音楽監督のオクサーナ・リーニフが登場、読売日本交響楽団とともに《蝶々夫人》を取り上げる。そして、25年に生誕200年を迎えるJ.シュトラウスⅡ世にもフォーカス。ジョナサン・ノット(指揮)&東京交響楽団によるオペレッタ《こうもり》が音楽祭の閉幕を賑々しく彩る。事務局長の芦田によると、「『演奏会形式で音楽に集中できる《こうもり》を!』という音楽祭側の意向にノットさんが共感してくださった」結果、実現したという。
9月、「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」vol.4で、ヴェルディ《アッティラ》の熱演を繰り広げたリッカルド・ムーティ。25年の音楽祭では関係深める東京春祭オーケストラを指揮し、レスピーギ「ローマの松」を主軸に据えたイタリア・プログラムのコンサートをひらく。また、トレヴァー・ピノックが手兵・紀尾井ホール室内管弦楽団とともに出演、J.S.バッハの名曲を披露する。
今年、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会を行ったルドルフ・ブッフビンダーは引き続き登場、シューベルトに焦点を当てた3公演(ソロ1公演、N響メンバーとの室内楽2公演)を行う。他にも小ホールで開催されるリサイタルや室内楽公演には、キリル・ゲルシュタイン(ピアノ)、金川真弓、アナ・チュマチェンコ(以上ヴァイオリン)ら国内外の一流アーティストが集結。アンサンブル・アンテルコンタンポラン、クラングフォルム・ウィーンと現代音楽シーンを代表する2団体のコンサートにも期待が高まる。
上野の各美術館・博物館を会場とする「ミュージアム・コンサート」、幅広い年代の子どもに向けたプログラムを提供する「東京春祭 for Kids」をはじめ、恒例の企画は継続。さらに、上演されるオペラ作品をトークと演奏でひも解く「東京春祭〈よく解る〉シリーズ」、藤木大地(カウンターテナー)による、日本の歌をテーマとする2年間のシリーズ……と、新たな試みも発表されている。“成人を迎えた”「東京・春・音楽祭」が21年目以降、どのような未来を切り拓いていくのか、見逃せない。
東京・春・音楽祭 2025
2025.3/14(金) 〜4/20(日)
2024.11/24(日)より順次発売
https://www.tokyo-harusai.com