信頼を寄せる腕利きの奏者たちとともに贈る名旋律の花束
ヴァイオリニストの前橋汀子は、日本人がソビエト連邦へ行くことさえ困難だった冷戦の時代、17歳で単身ソ連に渡り、レニングラード音楽院でミハイル・ヴァイマンに師事した。その後、アメリカに留学しジュリアード音楽院でロバート・マンに学び、スイスではヨーゼフ・シゲティやナタン・ミルシテインら巨匠から薫陶を受け、日本を代表する国際的なヴァイオリニストとして活躍する。2022年には演奏活動60周年を迎えた。近年はソロ活動だけでなく、「前橋汀子カルテット」を結成し、新たにベートーヴェンの弦楽四重奏曲を手掛けるなど、ますます音楽に対して真摯に取り組んでいる。
そんな日本音楽界のレジェンドというべき彼女が、文京シビックホールの「夜クラシック」に登場し、ヴァイオリンの森下幸路、森岡聡、伝田正秀やチェロの門脇大樹ら実力派弦楽器奏者を集めたアンサンブルとともに、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」などを披露する。前橋と彼女が信頼する名手たちとの共演が楽しみだ。そのほか、ドビュッシーの「月の光」、マスカーニの歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」、マスネの「タイスの瞑想曲」、ドヴォルザークの「わが母の教え給いし歌」などの名曲も弦楽アンサンブル伴奏で演奏される。それらはまさに前橋の十八番のレパートリーであり、今の彼女を聴くには最適のプログラムといえるだろう。
文:山田治生
(ぶらあぼ2024年2月号より)
2024.3/15(金)19:00 文京シビックホール
問:シビックチケット03-5803-1111
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