日本の音楽界を代表する2人の巨匠による、貫録たっぷりのドヴォルザーク。冒頭楽章、管弦楽のみの第2主題提示では、ホルンをたっぷりと歌わせ、英雄的な雰囲気をぐんと引き出す。その同じ主題を朗々と歌わせる堤。第2楽章では、ニュアンスに満ちたオーケストラのなか、独奏チェロはテンポを変化させながら、独特の渋味のある音色でじっくりと歌を紡いでいく。終楽章の鮮烈なロンド主題を弾いても、そのチェロは歌心を忘れない。なんという味わい深さ。チェリストのマイペースな運びに、小林と日本フィルもしっかりと膝を突き合わせ、響きを丹念に交わし合う様子がじつに麗しい。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年9月号より)
【information】
CD『ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 /堤剛&小林研一郎&日本フィル』
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
堤剛(チェロ)
小林研一郎(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
収録:2016年3月、サントリーホール(ライブ)
マイスター・ミュージック
MM-4532 ¥3520(税込)