2024北九州国際音楽祭の聴きどころ

若手からベテランまで注目アーティストが集結

左より:篠崎史紀 ©井村重人/神尾真由子 ©Makoto Kamiya/上原彩子 ©武藤 章/エフゲニー・キーシン ©Mascia Sergievskaia/田所光之マルセル ©Shigeto Imura

 今年も北九州国際音楽祭が10月12日から12月7日にかけて、北九州市立響ホール他、市内各地で開催される。1988年に市制25周年を記念して創設されて以来、バラエティに富んだ意欲的なプログラムを提供する音楽祭として、広く市民に親しまれている。今回のテーマは「美を継ぐ 心を継ぐ」。世代を超えた伝統の継承が音楽祭のコンセプトに掲げられる。

 まず注目公演として挙げたいのは、地元出身の篠崎史紀がコンサートマスターを務める「マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ」(11/23)。これは国内主要オーケストラのコンサートマスターや首席奏者たちからなる「マイスター・アールト」組と、2013年の北九州国際音楽祭ガラ・コンサートのためにオーディションで選ばれた若き精鋭たちを核とする「ライジングスター」組が融合したオーケストラ。N響特別コンサートマスター篠崎のもと、ハイドンの交響曲第88番「V字」、モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」、ベートーヴェンの交響曲第2番からなるウィーン古典派プログラムを披露する。指揮者を置かず、メンバーの自発的なアプローチにより音楽を作り上げる。

 ヴァイオリンの神尾真由子とピアノの上原彩子によるデュオ(10/12)は豪華だ。チャイコフスキーの「懐かしい土地の想い出」と「ワルツ・スケルツォ」、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番といったロシア音楽に、上原のソロによるシューマンの幻想曲がはさまれる。濃密なひとときを過ごせるだろう。

 エフゲニー・キーシンは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第27番、ショパンの幻想曲、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第2番他からなるプログラムを組む(12/7)。今やピアニストの枠を超えて、時代のシンボルともいえる芸術家になりつつあるキーシン。その姿にはすでに大家の風格が漂う。

 サンタンデール国際ピアノコンクール第3位の新鋭、田所光之マルセルはサロン・コンサートに出演(10/31)。チャイコフスキー(プレトニョフ編)の演奏会用組曲「くるみ割り人形」に、ラモー、ベートーヴェン、ラヴェルを組み合わせたプログラムが新鮮だ。

 「日本の伝統芸能 能×日本舞踊 時代(とき)の美 —室町の幽玄 江戸の粋—」(11/16)では、長唄「娘道成寺」(若柳流)、半能「土蜘蛛」(金剛流)が上演される。実演付きレクチャーや能面体験、和楽器体験も用意され、西洋音楽のみならず日本の伝統芸能の継承にも焦点が当てられる。

 これらに加え、ブラック・ダイク・バンド来日公演や、講座なども組まれる。好奇心を刺激するプログラムがそろった。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2024年9月号より)

2024.10/12(土)〜12/7(土) 北九州市立響ホール 他
問:響ホール音楽事業課093-663-6661
https://www.kimfes.com
※音楽祭の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

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