フォルテピアノとガット弦の音色が浮かび上がらせるブラームスの実相
コンチェルト・ケルンのコンサートマスターなどでバロック・ヴァイオリン奏者として目覚ましい活躍をしている佐藤俊介。近年はロマン派音楽に意欲を示し、2022年には浜離宮朝日ホール他で鈴木秀美、スーアン・チャイの3人でブラームスの室内楽を披露して話題を呼んだ。それからおよそ2年。今度はチャイと、ブラームスのヴァイオリン・ソナタの3曲とヨアヒム、クララ・シューマンのロマンスという作曲家の交友関係を偲ばせるコンサートを行う。
ご存じのように、バロック・ヴァイオリンには羊腸などのガット弦が使われていて、スティール等の人工弦とは、扱いや表現の可能性が違う。実はこのガット弦は20世紀中頃まで使われ、親しまれていた。ブラームスの時代も然り。佐藤はこのガット弦を自在に操って驚くほど多彩な表現を聴かせる。それこそが佐藤が欧州の専門家や愛好家を魅了し続けている理由だ。
一方、今回チャイの弾くJ.B.シュトライヒャー(1871年製)は、ブラームスが晩年に所有していた楽器とほぼ同型。85鍵とサイズは大きいものの、ハンマーアクションはウィーン式で平行弦。現在のピアノや同時代のイギリス式の楽器とは異なる仄暗く甘い独特なサウンドは、ブラームスら後期ロマン派にふさわしい。佐藤らはロマン派の楽譜の読み方やアゴーギクなどの演奏習慣も研究しているという。これまでにない新鮮な魅力に富んだ「雨の歌」他が聴けることだろう。
文:那須田 務
(ぶらあぼ2024年9月号より)
2024.10/11(金)19:00 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/