INTERVIEW 中ヒデヒト(クラリネット)

ブーレーズにマイムにジャズ - センス煌めく冬の一夜

 サイトウ・キネン・オーケストラや水戸室内管弦楽団で活躍する気鋭のクラリネット奏者、中ヒデヒトが胸踊るリサイタルを開催する。会場は代々木上原にあるムジカーザ、毎年2月に行われ今年で5周年を迎える。

 公演は3部構成。第1部は、20世紀を代表する作曲家のひとり、ピエール・ブーレーズの「二つの影の対話」を披露する。あらかじめ録音しておいたクラリネットのパートを当日会場に設置されたスピーカーから再生し、実演によるクラリネットの生音と共演させるという、ライブで聴ける機会が非常にめずらしい作品だ。

「とても難しく必死で音を読む毎日です。この作品を演奏するにはたくさんのハードルを乗り越えないといけないのですが、幸運なことにブーレーズが創設したIRCAMの作曲研究員の佐原洸さん(エレクトロニクス)にご協力いただけることになりました。パリに留学していたときの師匠、アラン・ダミアンの演奏を聴いて憧れていたこの作品に、今回挑みます」

 再生された音と生音、ライブでこそ真価を発揮する作品を体感できる貴重な機会になりそうだ。

 第2部はパントマイムのパフォーマー バーバラ村田との共演。中ヒデヒト作曲の音楽とのコラボで会場を盛り上げる。1部のストイックさとは対照的に、リラックスしてクラリネットの音色を味わえそう。

 そして最終第3部、土曜の夜をジャズで締める。共演はピアニストの壷阪健登。世界的ジャズピアニスト小曽根真と共演するなど、今注目を集める新鋭だ。疾走感あふれるセッションを期待したい。

 と、一口に「クラリネットリサイタル」と言っても、3部それぞれまったく異なるライブに行くような構成になっている。さらに、ステージにはフラワーデザイナーによる植物の飾り付けがあったり、アロマの香りで会場全体を演出するなど、聴覚だけでなく嗅覚、視覚でも観客を刺激し、大人の遊び心を存分に満たしてくれそうだ。

昨年のリサイタルより

 驚きはこれだけではない。この日は11:30から同じくムジカーザで「土曜日の音楽会・ゼロ歳」という、0歳児から入場できる本格的なコンサートも用意されている。今回が17回目というこの企画、子どもに向けの演奏会でありつつも「入門編はやりません。だってみんなの『聴く力』を信じているから」と、夜のリサイタルで演奏するブーレーズをテーマにしている。

「我々演者も本気で子ども達と向き合う時間。ブーレーズ『二つの影の対話』を全部やっちゃいます。この難解で普遍的な音列とリズム。頭の柔らかい子ども達が聴いたらどんな反応が返ってくるのでしょうか。とても楽しみです。
 そして難しい曲を聴いたあとはパントマイムのパフォーマンスでみんな笑顔に。この音楽会に毎年参加してくれているヴァイオリンの山本優真くんの演奏や、壷阪くんの作った美し過ぎるキラキラ星も必聴です」

と見どころ聴きどころが満載の1時間になりそうだ。会場には、ベビーカーごと入場できるという配慮も嬉しい。

「美しいコンサートホールで生の音楽を聴いてもらいたいです。昼前のムジカーザは光が差し込んでより美しい気持ちになります」

2月17日、ムジカーザは終日、中ヒデヒトというひとりのアーティストの感性と真心に満たされた空間になる。われわれも心を解放し、全身でそれを感じたい。

今年の告知動画

土曜日の音楽会・ゼロ歳 vol.17
2024.2/17(土)11:30 ムジカーザ


出演
中ヒデヒト(cl、作編曲)
バーバラ村田(マイム)
壷阪健登(pf)
山本優真(vn)
佐原洸(elec)

プログラム
二つの影の対話〜クラリネットとテープのための〜/P. ブーレーズ
バーバラビットの世界

中ヒデヒト クラリネットリサイタル2024
〜分身、或いは影〜

2024.2/17(土)18:00 ムジカーザ


出演
中ヒデヒト(cl、作編曲)
バーバラ村田(マイム)
壷阪健登(pf)
佐原洸(elec)

プログラム
・二つの影の対話〜クラリネットとテープのための〜/P. ブーレーズ
・中ヒデヒト新曲
中ヒデヒトが聴かせる!バーバラ村田が魅せる!壷阪健登が操る!
音楽幻想絵巻
・かたわれ 〜Doppelgänger〜 

問:nakahidehito.concert@gmail.com
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