注目の俊英が、傑作に生気を吹き込む
9月の東京交響楽団定期は、21歳時にグスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで第2位を獲得したアジス・ショハキモフの登場。1988年ウズベキスタン生まれの彼は、13歳にして指揮者デビューした俊才で、ドレスデン国立歌劇場管、フランス放送フィル、ロンドン・フィル等に客演し、2021/22シーズンからストラスブール・フィルの音楽監督を務めている。日本でも読響等への客演やラ・フォル・ジュルネでのデュッセルドルフ響との共演で好評を博しており、ノットのもとで活力漲る今の東響からいかなる音楽を引き出すか? 大いに注目される。
演目は、まずドビュッシーの「管弦楽のための映像」より〈イベリア〉。スペイン情緒に溢れた、吹奏楽でも人気の作品で、精妙さと活気が共生した音楽はぜひともライブで味わいたい。メインは、迫力と機智に溢れた明快な傑作、プロコフィエフの交響曲第5番。ショハキモフは、フランクフルト放送響を指揮した同曲の動画で、劇的かつ生気に富んだ演奏を展開しているだけに、期待はすこぶる大きい。
女性トランペット奏者ティーネ・ティング・ヘルセットの出演も楽しみだ。1987年ノルウェー生まれの彼女は、世界の一流楽団との共演やCDで人気を得ている実力者。“歌うトランペッター”と称される彼女の柔らかくしなやかな演奏も、ぜひ生で体験したい。演目はトマジの協奏曲。20世紀の同楽器協奏曲を代表するこの曲は、聴くと実に快適だし、ヘルセットの持ち味にもフィットする。本公演は、彼女とショハキモフの同世代共演も含めて、終始耳目を離せないコンサートだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年9月号より)
第703回 定期演奏会
2022.9/17(土)18:00 サントリーホール
川崎定期演奏会 第87回
9/18(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
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