In memoriam 大町陽一郎

Yoichiro Omachi 1931-2022

 ヨーロッパ各地の歌劇場などで活躍し、日本人として初めてウィーン国立歌劇場を指揮したことで知られる指揮者の大町陽一郎氏が2月18日に死去していたことが明らかになった。享年90歳。

写真提供:東京フィルハーモニー交響楽団

 1931年東京生まれ。東京藝術大学作曲科を卒業。在学中から渡邊暁雄、クルト・ヴェスに指揮法を学んだ。まだ戦争の爪痕が残る1954年にウィーンに留学。その後カール・べーム、ヘルベルト・フォン・カラヤン、フランコ・フェラーラに師事した。1968年、当時西ドイツのドルトムント市立歌劇場の常任指揮者に就任。1980年2月には、日本人指揮者として初めてウィーン国立歌劇場の指揮台に立ち、《蝶々夫人》を指揮。1982年から84年にかけて、同歌劇場の専属指揮者として活躍した。

 日本では、1961年から10年にわたり東京フィルの常任指揮者を務めたほか、二期会や藤原歌劇団などでオペラもたびたび手がけた。1975年には、ウィーン・フィルとともに来日したベームの勧めで日本ヨハン・シュトラウス協会を設立するなど、クラシック音楽の普及に尽力。また、東京藝術大学で後進の指導に当たるなど、教育者としての功績も大きい。1992年、ドイツ連邦共和国功労勲章「大功労十字」を受章。

 録音は多くはないが、ウィーン・フォルクスオーパー響を振った『美しき青きドナウ ウィンナ・ワルツ&ポルカ集』(ソニー)、故・中村紘子、東京フィルと共演した『グリーグ:ピアノ協奏曲』(同)、大阪センチュリー響&大阪シンフォニカー響を振ったライブ盤『ブルックナー:交響曲第8番』(プラッツ)、九響との『シュトラウス・ファミリー名曲集』(フォンテック)などがある。また、『クラシック音楽のすすめ』『ボスは父親なんだ』『クラシック音楽を楽しもう!』などの著作も残しており、国際的に活躍する指揮者の草分け的存在として多くのクラシック・ファンに親しまれた。