横山幸雄 ピアノ・リサイタル ベートーヴェン・プラス Vol.4

30代のソナタ群を様々な幻想曲とともに

C)ミューズエンターテインメント
 ベートーヴェンの生誕250年にあたる2020年を目指して、横山幸雄が2013年から開始した『ベートーヴェン・プラス』。ベートーヴェンの作品番号付き全ピアノ作品のみならず、他の作曲家の関連作品も交えて構成されるコンサート・シリーズだ。毎回長時間の公演だが、昨年は「特別演奏会」としてベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲を一気に披露した。
 第4回目の今年は「折り返し地点」。難聴による苦悩と葛藤の末に、30代となった俊英が「“世紀の芸術家”へと飛躍していった変遷」を追う。「7つのバガテル op.33」や「2つの前奏曲 op.39」、そしてピアノ・ソナタは名曲「月光」(第14番)と「テンペスト」(第17番)を含む第13〜18番を取り上げる。「月光」とは俗称であり、ベートーヴェン自身が付けたタイトルは「幻想曲風ソナタ」であった。そこで今回は、他の作曲家の作品を“幻想曲”つながりで構成している。
 幻想曲=ファンタジーとは本来、即興的な書法で創作された自由な形式の楽曲を指す。横山が選んだのはバッハの「半音階的幻想曲とフーガ BWV903」、モーツァルトの「幻想曲 K.397」、ショパンは「幻想ポロネーズ」を含む3作品、そしてシューマンの「幻想曲」だ。バロックからロマン派にいたる「幻想曲」の音楽史も辿れるというわけだ。激動の社会的変革期を生き、新しい音楽様式を切り開いたベートーヴェンの姿とともに、作曲家たちの創造性を映し出すファンタジックな世界を存分に楽しみたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2017年9月号より)

2017.9/23(土・祝)10:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
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