桑原ゆう「タイム・アビス 17人の奏者による2群のアンサンブルのための」が第31回 芥川也寸志サントリー作曲賞に決定

 芥川也寸志サントリー作曲賞(旧名:芥川作曲賞)は、8月28日サントリーホールで、演奏会による公開選考がおこなわれ、桑原ゆうの「タイム・アビス 17人の奏者による2群のアンサンブルのための」が第31回の受賞作品に選定された。

桑原ゆう 写真提供:サントリーホール

 同作曲賞は、故・芥川也寸志の功績を記念してサントリー音楽財団(現・公益財団法人 サントリー芸術財団)が1990年に創設。日本の新進作曲家の作品を対象とし、演奏会形式による公開選考という形で審査する。さらに、受賞作曲家には新しいオーケストラ作品が委嘱され、2年後にその初演が行なわれる点も大きな特徴となっている(この日は第29回受賞者・稲森安太己の「ヒュポムネーマタ ピアノとオーケストラのための」世界初演がおこなわれた)。
 今年は、杉山洋一指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団が、ノミネートされていた3作品の公開演奏を担当。演奏終了後、選考委員(近藤譲・坂田直樹・原田敬子)による公開討議(司会:沼野雄司)が実施され、「最先端の作曲技術を駆使して、3種の時間の概念をベースとした新しい聴体験をもたらした」として桑原作品が高く評価され、受賞が決定した。
 続いておこなわれた贈賞式では、桑原に賞状と賞金150万円が贈られた。また、桑原にはサントリー芸術財団より新しいオーケストラ作品が委嘱された。

桑原ゆう 写真提供:サントリーホール

▽第31回芥川也寸志サントリー作曲賞
桑原 ゆう(くわばら・ゆう)
『タイム・アビス』 17人の奏者による2群のアンサンブルのための 

<贈賞理由>
 最先端の作曲技術を駆使して、3種の時間の概念をベースとした新しい聴体験をもたらした点が高く評価された。
<略歴>
 1984年生まれ。東京藝術大学および同大学院修了。日本の音と言葉を源流から探り、文化の古今と東西をつなぐことを軸に創作を展開。国立劇場、神奈川県立音楽堂、静岡音楽館AOI、トランジット現代音楽祭(ルーヴェン)、I&I Foundation(チューリヒ)など、国内外より委嘱を受け、世界各地の音楽祭や企画で作品が取り上げられている。「淡座」メンバー。洗足学園音楽大学非常勤講師。 

第31回の候補作品
桑原ゆう:『タイム・アビス』17人の奏者による2群のアンサンブルのための(2019~20)
初演=2020年3月1日
アルベルト・シュバイツァー・スクール・オッフェンバッハ(オッフェンバッハ・アム・マイン/ドイツ)
cresc…現代音楽ビエンナーレ「クラッシュコース ヒューマン_マシン」

杉山洋一:『自画像』オーケストラのための(2020)
初演=2020年8月30日
サントリーホール 大ホール サントリーホール サマーフェスティバル 2020
《ザ・プロデューサー・シリーズ 一柳慧がひらく 2020
東京アヴァンギャルド宣言~オーケストラスペースXXI-2》

原島拓也:『寄せ木ファッション』 琵琶とオーケストラのための(2020)
初演=2020年11月19日
NHK放送センター 505スタジオ
第89回日本音楽コンクール 作曲部門 本選入賞作品演奏

サントリー芸術財団
https://www.suntory.co.jp/sfa/