せんくら 仙台クラシックフェスティバル2021

若手からベテランまで、トップ・アーティストが秋の杜の都に大集結!

*新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部公演の出演者変更・代替公演のお知らせが出ております。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

 「せんくら」の愛称でおなじみ、仙台クラシックフェスティバルが、今年は10月1日から3日にかけて開催される。毎秋恒例の音楽祭ではあるが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となっただけに、今年の開催を待ち望んでいた方も多いことだろう。2006年に開始され、今回で15回目を迎える同音楽祭は「だれもが気軽に楽しめる音楽フェスティバル」として定着している。1公演の長さは45分〜60分、複数会場で朝から晩まで多数の公演が開かれ、コンサートをはしごして楽しめるという、入門者にも足を運びやすいスタイルが採用されている。

 「せんくら」の魅力は日本のトップレベルのアーティスト陣が多数集まるところ。若手からベテランまで実力者がずらりとそろい、どの時間帯、どの会場でもクオリティの高い公演を聴ける満足感がある。特に若手アーティスト陣には、ヴァイオリンの服部百音、郷古廉、成田達輝、ピアノの金子三勇士、松田華音、フルートの上野星矢、サクソフォンの上野耕平らそうそうたる顔ぶれが並んだ。もちろん、仙台フィルハーモニー管弦楽団もこの音楽祭に欠かすことのできない存在だ。今回は09年から12年にかけて正指揮者を務めた山下一史が率いる。

 バラエティに富んだプログラムが並ぶが、特に今回目立つのは生誕100年のピアソラ、没後100年のサン=サーンスをフィーチャーしたプログラム。たとえば、バンドネオンの三浦一馬、サクソフォンの上野耕平、ピアノの山中惇史の共演(プログラム3)や、ギターの福田進一と尺八の藤原道山という意外性のあるデュオ(プログラム75 完売)で、ピアソラの音楽の自在さ、ジャンルを超えた普遍性を体感できることだろう。また、ヴァイオリンの神谷未穂とピアノの佐藤彦大によるデュオリサイタルでは、サン=サーンスの「ハバネラ」と、そのライバルともいるフランクのヴァイオリン・ソナタを並べる(プログラム17)。エスプリとロマンの対比がおもしろい。

 華やかさで目をひくのは山下一史指揮仙台フィルとヴァイオリンの服部百音、ピアノの松田華音との共演(プログラム56)。ひとつの公演でメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を聴けるのはぜいたく。若い才能がのびやかに羽ばたく。

 ベテラン陣も活躍する。フルートの工藤重典とギターの福田進一も山下指揮仙台フィルと共演する(プログラム20)。モーツァルトの爽快なフルート協奏曲第1番、ロドリーゴの情感豊かな「アランフェス協奏曲」で、巨匠の至芸をじっくりと味わいたい。

 古楽好きが聴き逃せないのはバッハ・コレギウム・ジャパンの2公演。室内楽編成による「ベスト・オブ・バッハ」(プログラム58)では、ブランデンブルク協奏曲第5番ほかの名曲を楽しめる。また、ヴィヴァルディの「四季」(プログラム59)ではバロック・アンサンブルならではの描写性に富んだ演奏を堪能できそうだ。鈴木優人のチェンバロも聴きもの。

 さて、どの公演を聴こうか。スケジュール表をにらみながら、プランを立てるところから音楽祭の楽しみは始まっている。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年9月号より)

2021.10/1(金)〜10/3(日) 日立システムズホール仙台(青年文化センター)、エル・パーク仙台、太白区文化センター、仙台銀行ホール イズミティ21
問:せんくら事務局(仙台市市民文化事業団内)022-727-1872
https://sencla.com
※フェスティバルの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。