長くプロデューサーとして録音の現場に立ってきた西脇義訓が、「あらたなの響きの創造」を求め、実力派の若手奏者らを集めて2013年に創立した「デア・リング東京オーケストラ（DRT）」。残響まで考慮に入れた瑞々しい録音は、たちまち話題に。18年には、デビュー演奏会を行った。チェロ以外のメンバー全員が立奏で、正面を向く配置から生まれる、自然な自主性。今回の録音もそれをつぶさに捉えている。しなやかに躍動するビゼー。「ジークフリート牧歌」は、まさに自主性なくして魅力は伝わらない。そして、「未完成」から引き出される、意外なほどの透明感。DRTは、“聞こえなかったもの”を聴かせてくれる。
文：笹田和人
（ぶらあぼ2021年8月号より）
【information】
CD『ビゼー：交響曲 他／西脇義訓＆デア・リング東京オーケストラ』
ビゼー：交響曲 ハ長調／ワーグナー：ジークフリート牧歌／シューベルト：交響曲第7（8）番「未完成」
西脇義訓（指揮）
デア・リング東京オーケストラ
N＆F
NF25810 ￥2800（税込）