ダニエル・ハーディング(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

ブラームスの真髄を聴かせるプロジェクトが始動

(C)青柳 聡
(C)青柳 聡

 新日本フィルハーモニー交響楽団と共に数々の名演を聴かせているハーディングだが、いよいよブラームスを集中して取り上げるビッグ・プロジェクト『All Brahms』がスタートする。5月から6月の3回のコンサートで、交響曲全4曲にヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第1番を演奏するというのだ。
 ブラームスの交響的作品群は、シンフォニー・オーケストラにとってレパートリーのコアとなる最重要演目だ。この山脈にどう挑み、どういう道筋で登頂するかに楽団の基本姿勢が表れてくる。ミュージック・パートナーとして4シーズン目を締めくくろうとする時期に打ち出されたプロジェクト、まさに機が熟したというべきで、指揮者、楽団ともに胸に期するところがあろう。
 それぞれに違った性格を持つ4つのシンフォニーの描き分けが見所だ。第1弾、5月2日の公演は交響曲第2番と第3番を組み合わせたプログラム。ベートーヴェンが9曲の偉業を達成した後、新機軸を打ち出すことが難しくなっていた交響曲というジャンルに、ブラームスは新風を吹き込んだ。伝統を真正面から受け止めた第1番に対し、第2番は明るくたおやかな性質を持つ。短い期間で一気に書き上げられたが、そこには緻密な主題操作も隠れている。一方、第3番は演奏機会こそ少ないが、渋い憂愁の中にほの暗い情熱を秘めた作品だ。憂いを含んだ第3楽章の旋律は口ずさみたくなる美しさで、ポピュラー音楽の世界でもさまざまに編曲されている。
 スコアにズバっと切り込んで、明快な解釈で聴き手をうならせるハーディング。伏線が縦横無尽に張り巡らされたブラームスでも、筋の通ったリードが期待できよう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2014年5月号から)

All Brahms Vol.1
第525回定期演奏会 サントリーホール・シリーズ
★5月2日(金)・サントリーホール Lコード:31825
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp