干野宜大(ピアノ)

ホロヴィッツが“恋した”銘器とともに

 桐朋学園大学卒業後1994年からハンガリーのリスト音楽院で学び、帰国後も意欲的な演奏活動を続ける干野宜大。湧き出す感性に従うかのような、迷いのない自由な表現が強い印象に残る、実力派ピアニストだ。
 そんな彼が、ベートーヴェンのソナタ「悲愴」、「月光」と幻想曲、そしてショパンのバラード全4曲という、名作ばかりを取り上げるリサイタルを行う。しかもこの日に使用するピアノは、ホロヴィッツが愛奏した1912年製のスタインウェイCD75。干野は幼少期にこのピアノによるホロヴィッツの演奏を聴いて感動し、以来、理想の響きとはこの楽器の音色だと思い続けてきたのだという。縁あって2012年に同ピアノでのリサイタルを果たし、今回はそんな思い入れある楽器との“再共演”となる。
 楽器の表現力が最大限に活かされる、ピアノレパートリーの中でも輝かしい存在感を放つ作品を集めたプログラム。かつて“名匠が恋した”ピアノとともに、どんな音楽が生み出されるだろうか。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2014年5月号から)

★4月29日(火・祝)・東京文化会館(小)
問:コンサートイマジン03-3235-3777 
http://www.concert.co.jp