浜離宮朝日ホールが7月3日リニューアル・オープン

記念コンサート・シリーズ開催

　2021年7月、改修工事による半年間の休館を経て、いよいよリニューアル・オープンする浜離宮朝日ホール。より快適な空間を提供する施設面での整備だけでなく、主催公演のラインナップも、より多彩にパワーアップしている。なかでも注目すべきは、新たなスタートを祝して「浜離宮朝日ホール リニューアル記念」と銘打たれたコンサート・シリーズ。いずれも豪華な出演者による、この空間でしか味わえない贅沢なひとときに期待が膨らむ。

♪世界的スターが登場

　幕開けを飾るのは、イタリア・オペラ界のスター・テノール、ヴィットリオ・グリゴーロ。コロナ禍のなか来日を果たし、ヴェルディ、プッチーニ、ドニゼッティなどのイタリア・オペラと、マスネ、グノーなどのフランス・オペラからの珠玉のアリアを届ける。世界の一流オペラハウスで主役を歌い続け、ファンを熱狂させてきたグリゴーロの歌声を、浜離宮朝日ホールという空間で堪能できるのは、この上ない贅沢だ。

♪タンゴやクロスオーヴァーも

　2021年はピアソラの生誕100年のアニヴァーサリーということで、バンドネオン奏者の三浦一馬率いるキンテート（7月6日）でのコンサートにも注目が集まりそうだ。アルゼンチン・タンゴの革命児であり、クラシックの音楽家たちにもオマージュされてきたピアソラの音楽。その真髄を存分に味わえる「ピアソラ・ベスト」的なプログラムを、精鋭揃いのプレイヤーたちが「今」の感覚で表現する。
　絶大な人気を誇るピアノ・トリオのH ZETTRIO、ヴォーカリスト＆ヴァイオリニストのサラ・オレインは、いずれもホールのオープニングを記念した特別ヴァージョンのコンサートを行う。ジャンルにとらわれない音楽で、スリリングなインタープレイに感嘆したり、癒しの歌声に心洗われたり、リラックスできるひとときになることだろう。

♪ヴィルトゥオーゾたちの「今」を聴く

　ピアニストの田部京子が浜離宮朝日ホールで開催してきたリサイタル・シリーズ「シューベルト・プラス」も第7回を迎える。今回はシューベルトのピアノ・ソナタ第4番に、ショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」、そしてシューマンの「クライスレリアーナ」というプログラム。透徹したピアニズムで描かれるロマン派の濃密な世界を堪能したい。

　2007年のチャイコフスキー国際コンクール優勝以来、若きヴィルトゥオーゾとして第一線をひた走ってきたヴァイオリニストの神尾真由子は、学生時代からの仲間たちとともにボッケリーニとシューベルトの弦楽五重奏を奏でる。気のおけない友人であり、日本を代表するトップ・プレイヤーでもあるメンバー同士の音楽による会話は、室内楽の愉しみを存分に感じさせてくれるに違いない。
　ミシェル・ダルベルトのリサイタルは、ショパンを中心に、モーツァルト、シューマン、リストというプログラム。アルフレッド・コルトーの愛弟子、ヴラド・ペルルミュテールのもとで研鑽を積んだフレンチ・ピアニズムの継承者であるダルベルトの円熟の境地を味わう。
　今後の浜離宮朝日ホールのラインナップからも目が離せない。

文：原典子