ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

ノット初のブルックナー「6番」を20世紀の傑作とあわせて

 5月には東響の指揮台にノットが戻ってくる。予定の公演以外にも特別演奏会が組まれた。こちらもゴージャスな布陣、“攻めた”プログラミングになっている。中身を精査しよう。

 まずはリゲティ「ラミフィケーション」。現代音楽演奏にも大きな足跡を残してきたノットのレパートリーにあって、リゲティは柱となる作曲家だ。本作は弦パートを細かく分割、ずらし重ね合わせることで音の雲海を出現させる。東響の弦ならではの透明度の高い演奏が期待できよう。

 続いてベルク「室内協奏曲」。ヴァイオリン、ピアノのソロを13人の管楽器奏者が彩る。《ヴォツェック》を作曲した後に取り掛かった作品で、管の扱いには風刺やユーモアも漂い、凝った音作りが楽しめる。遅筆の作曲家にしては筆の勢いもあり、難曲でもあるが、ソリストは東響が誇るコンサートマスター、グレブ・ニキティン(ヴァイオリン)、現代音楽にもめっぽう強い児玉麻里(ピアノ)と重量級で、ノットのコントロールのもと濃密な時間が編まれていくことだろう。

 弦・管のコントラストが鮮やかな前半に対し、後半はブルックナーの交響曲第6番で、管弦楽の醍醐味をたっぷり味わってもらう趣向のようだ。第5番までの巨大化路線から一転し、全体をコンパクトにまとめたブルックナー中期の実験作で、この人には珍しい軽やかさの中に、中年男の哀愁もそこはかとなく伝わってくる。

 ありそうであまりないプログラミング、メッセージも明快で、いつものことながらノットのセンスに舌を巻いてしまう。演奏クオリティは、もちろん保証付きだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年5月号より)

*音楽監督ジョナサン・ノットの来日が当初予定から変更となり、同時に全体的なスケジュールや外国人ソリストの入国制限など、開催の準備に関わる多くの要件が変更となったため、下記のとおり曲目が変更となっています(5/10主催者発表)。

【曲目】
ベルク:室内協奏曲-ピアノ、ヴァイオリンと13管楽器のための
マーラー:交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」

特別演奏会
2021.5/27(木)18:30 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp