新調したばかりの楽器でバロックを魅せる
ベルリン・フィルの元コンサートマスター、ライナー・クスマウルと、同フィルの首席奏者による結成から今年で18年目。世界的な古楽アンサンブルとして知られるベルリン・バロック・ゾリステンが3年ぶりに来日公演を行う。その精緻極まるアンサンブルとともに楽しみなのが、ゲスト・ソリストとして参加するベルリン・フィル首席フルート奏者のエマニュエル・パユ。今回は、テレマンの協奏曲(TWV51:D2)、J.S.バッハのブランデンブルク協奏曲第5番&管弦楽組曲第2番の3曲でソロを吹く。
「3曲とも同じコンビで録音もしている大好きな作品。優れたリコーダー奏者でもあったテレマンの一連のフルート協奏曲は、柔らかなトーンの楽器たちとの組み合わせにより、フルートの明るさが際立つのが最大の魅力ですね。そしてJ.S.バッハの2曲は、どちらも言わずと知れた彼の代表作。私も20年近くにわたり、折に触れて愛奏してきました。でも、その複雑さ故に、自分の思い描く理想に近づくのは本当に難しい」
そんなJ.S.バッハを学ぶ上で、彼が最も影響を受けたのが、楽団の大先輩でもあるオーレル・ニコレだそうだ。
「私の解釈とは随分違いますが、“音楽の父”の作品を身構えずに、常に身近に感じながら演奏する術を教わりました」
今回のツアーでは、ヴィオラ、チェロなどのメンバーが交替して若返り。中でも、創設者のクスマウルに替わり、ウィーン・フィルの元コンマスで、2013年から読響のコンサートマスターに就任したダニエル・ゲーデがリーダーを務めることで話題になっている。
「楽団としてJ.S.バッハとテレマンを日本で演奏するのは10年ぶり。モダン楽器に古楽仕様の弦と弓を用いる演奏法は、その間に重ねたステージや研究を通して、大きな進歩を遂げたと思います。ゲーデは古楽奏法に精通している人なので、そこに更なる新風や成熟をもたらしてくれることでしょう。それに彼と私は年齢が近いので親近感も強い。共演が本当に楽しみです」
そしてもうひとつ、パユがぜひ注目してほしいと目を輝かせて語るのが、昨年新調したばかりの“相棒”。アメリカ・へインズ社製の14金製フルートだ。
「1960年代にジャン=ピエール・ランパルも同型を使っていた名器で、“エレガント”の一言に尽きます。技術的な負担が大きく軽減されて、音楽により専念できる。古い車から最先端のハイブリッドカーに乗り換えたように幸せな吹き心地です(笑)」
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ2014年1月号から)
ベルリン・バロック・ゾリスデン with エマニュエル・パユ
★2月25日(火)・札幌コンサートホールKitara(011-520-1234) Lコード:16812
26日(水)・サントリーホール(アスペン03-5467-0081) Lコード:33625
27日(木)・大阪/いずみホール(06-6944-1188) Lコード:52668
28日(金)・熊本県立芸術劇場(オフィスムジカ096-355-7315) Lコード:89753
*公演によりプログラムは異なります