東京オペラシティ B→C 藤井玲南(ソプラノ)

芸術家たちのミューズに視点を置いて、さまざまな愛に寄り添う

C)Shigeto Imura
 東京オペラシティの「B→C バッハからコンテンポラリーへ」にソプラノの藤井玲南が登場する。藤井は東京藝術大学、同大学院で学び、ドイツのエアフルト歌劇場、ライプツィヒ歌劇場にて研鑽を積み、ウィーン国立音楽大学を卒業した。本公演では、創作のインスピレーションを刺激した「“芸術家たちのミューズ”をテーマに、夫婦の愛、人間が抱える孤独、神への信仰や賛美に焦点をあてた」多彩な選曲で、透明感のあるのびやかな声と豊かな表現力を披露する。

 シューマン夫妻の歌曲は愛を語り合い、マーラーの妻アルマの歌曲は溢れるばかりの情熱を秘めている。アルマの3番目の夫となるヴェルフェルの詩による歌曲もあり、夫婦の心の距離を仄めかす。マーラーのリュッケルトの詩による〈真夜中に〉は、藤井が「希望と力を与えてくれる」として、どうしても歌いたかった1曲。孤独や不安から解放され、光が差してくる。

 フランスの現代作曲家ニコラ・バクリは、リヨンのコンクールの課題曲で初めて知ったという。彼の歌曲とメシアンが最初の妻に捧げた歌曲で、フランスの愛のかたちを描く。そして、バッハのカンタータの編曲も手がける、藤井と同世代の山中千佳子の新作も期待大だ。古事記に登場する日本最古の芸能の女神アメノウズメが題材で、作詞は藤井自身による。

 「歌曲は自分の内面を掘り下げていく作業」と語る藤井。作曲家のミューズに自身を重ねたり、客観的にアプローチしたり。彼女の歌は様々な世界を拓いてくれるだろう。ピアノは本山乃弘。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2021年2月号より)

2021.2/16(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp