知られざる佳品を掘り起こす、発見と驚きの旅
ヴァイオリンとチェロ。弦楽四重奏をはじめとする室内楽やオーケストラでの“共演”は多いものの、これらを二重奏の形で耳にする機会となると、実は意外なほどに少ない。そんな“ミニマムな室内楽”の面白さと魅力を、姉弟ならではの息の合った快演で追求し続けているのが、印田千裕&陽介によるデュオ。第9弾のリサイタルでも、生誕250年のベートーヴェンをはじめ、バロックから現代までの“知られざる佳品”を披露する。
東京藝大から英国王立音楽院に学び、古典作品はもちろん、邦人作曲家による作品の紹介に力を注ぐなど、骨太かつしなやかな活動を続ける実力派ヴァイオリニストの姉・千裕。そして、やはり東京藝大からチェコ・プラハ音楽院に学び、ジャンルを超えた多彩な活動を展開するチェリストの弟・陽介。このデュオによるステージは、清冽な響きと幅広い表現力に加え、音楽史の影に隠れた佳品も掘り起こす、さながら発見と驚きの旅だ。
今回は、クラリネットとファゴットのために書かれた「3つの二重奏曲」WoO27から第3番と、まだ故郷ボンにいた頃に書いた「二重奏曲(断章)」と併せて軸に。イタリア・バロックの名匠ダッラーバコから19世紀フランスのダンクラまで、彩り豊かな作品をセレクト。さらに、20世紀ベルギーのヨンゲン(ジョンゲン)やフランスのリヴィエの作品やクセナキス「ディプリ・ジーア」、遠藤雅夫「デュオスクロール1b」と、近現代の先鋭的なサウンドも味わう。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2020年11月号より)
2020.11/29(日)14:00 王子ホール
問:マリーコンツェルト03-3983-2026
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