2019年ロン=ティボー=クレスパン国際音楽コンクール第2位受賞で注目を集めた精鋭の国内初のソロ・アルバム。まずは、ショパンに始まり、彼の影響が顕著なラフマニノフの作品を経てブーレーズの21世紀作品に至る選曲&構成が光っている。演奏自体も隅々まで考え抜かれた表現がなされ、それでいて流れはごく自然。本作の中では有名なショパンのバラード第1番の構築や語り口はその好例だ。しかも全体の起伏が見事に描かれており、通して聴くと1つの作品であるかのような感触も得られる。奏者自身の解説を含むすべてが示唆に富んだ、要注目のディスク。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年11月号より)
【information】
CD『ショパン ラフマニノフ ブーレーズ/務川慧悟』
ショパン:ボレロ、バラード第1番、ノクターン第18番
ラフマニノフ:楽興の時
ブーレーズ:アンシーズ(2001年版)
務川慧悟(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-7253 ¥2800+税