クァルテットウィークエンド2020-2021 ウェールズ弦楽四重奏団〜ベートーヴェン・チクルスⅢ&Ⅳ(全6回)

実力派クァルテットの知的な選曲が光るチクルス2年目

左より:横溝耕一、﨑谷直人、富岡廉太郎、三原久遠
C)Satoshi Oono

その名をラテン語の「verus(真実の)」に由来するウェールズ弦楽四重奏団。ソリストとして、オーケストラの主要メンバーとして楽界を牽引する、﨑谷直人、三原久遠(以上ヴァイオリン) 、横溝耕一(ヴィオラ)、 富岡廉太郎(チェロ)の4人による現代屈指の実力派クァルテットだ。第一生命ホールで進行中のベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲チクルス(全6回)が2年目、中盤を迎える。

ベートーヴェンの16曲をどう分け、どう関連づけながらプログラムするかは、全曲演奏の大きな興味だが、今回の構成も知的だ。彼らによれば、第3回(11/14)はベートーヴェンのパトロン2人にフォーカスした選曲。ロプコヴィッツ侯爵に献呈された2曲、第4番ハ短調とその平行調で書かれた第10番変ホ長調「ハープ」。そしてラズモフスキー伯爵に献呈された第7番ヘ長調「ラズモフスキー第1番」。この3曲は、ロプコヴィッツに献呈された「英雄」、連名で両者に献呈された「運命」「田園」の交響曲3曲と調性が一致するという美しい連環もかっこいい。

そして第4回(2021.1/15)は、第1番ヘ長調、第11番ヘ短調「セリオーソ」、第14番嬰ハ短調と、前期・中期・後期の3曲がバランスよく配置される。第1番と第11番は同主調の関係だが、ともに第1楽章のテーマがユニゾンで提示されるという共通項もある。
苦悩から歓喜へ。いまだ不安な状況が続くなか、彼らのベートーヴェンが希望の光を与えてくれる。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2020年10月号より)

【Ⅲ】2020.11/14(土)14:00
【Ⅳ】2021.1/15(金)19:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
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