日本を代表する吹奏楽団の1つ、シエナ・ウインド・オーケストラが、「新型コロナウイルス感染症対策検証試演会」を行った。日付・会場は、もともと第50回定期演奏会が予定(8月30日に延期)されていた7月4日(土)文京シビックホール。これはコンサートの再開を見据える同ホールと連動しての試みだ。弦楽器を含むフル・オーケストラによる試演会は6月から随時施行されてきたが、一般的には飛沫が不可避と考えられがちな吹奏楽での本格的検証は東京初。管楽器が揃って演奏した際にいかなる結果が導かれるのか? 試演会の重要度は高いし、興味深くもある。
舞台に上がるのは、通常の定期演奏会を想定したレギュラー編成で、最大48名(ピアノ、ハープを含む)。原田慶太楼の指揮で3曲を演奏し、新日本空調の微粒子可視化システムを用いて、専門家による検証がなされた。
前半は張り出し舞台を使用した広めの間隔でのセッティング。スーザ「星条旗よ永遠なれ」で音出しをした後、最初に指揮者が喋った場合のマスクの有無での検証がなされ、次いでユーフォニアムなど他で実験されていない7種の楽器の検証が、各々自由に音を出す際に譜面台近くで浮遊粒子量を計測する形で行われた。その後全員でJ.ウィリアムス(真嶋俊夫編曲)の「スター・ウォーズ メイン・タイトル」を演奏。物凄い迫力で鳴り渡るこの曲では、楽団全体の前=舞台最前部での大きな飛沫の有無が可視化された。そしてワーグナー(カイリエ編曲)の「エルザの大聖堂への行列」を演奏し、今度は金管陣の前部で可視化。前半の検証を終了した。
指揮者がマスクを着けて話した場合は飛沫がほとんど見えず、各楽器の大きな飛沫もそれほど顕著ではないというのが、ここまでの大まかな見解(専門家の最終報告ではない)だが、楽員からは「広めの間隔ではタイミングやバランスがとり辛い」との意見が多かった。
休憩後は、張り出し舞台を使わずに約1メートル間隔で並ぶ、普段の公演に近いセッティングに変更。再び「スター・ウォーズ」を演奏し、派手に鳴る金管陣の前で可視化された。次いで「エルザの大聖堂への行列」では、同曲で最初から活躍するフルートの前部で可視化。そして「星条旗よ永遠なれ」に戻り、ピッコロ奏者を指揮者横に立たせて、ソリストがいる場合の状況を可視化し、2時間にわたる試演会は終了した。
後半の見慣れた配置はやはり自然だし、サウンドも俄然まとまりがいい。この配置でも全体に大きな飛沫は些少とのことだったが、後日には今回担当した新日本空調の実験用クリーンルームでの微粒子可視化撮影も行われ、それを合わせた詳細な報告や最終的な見解が改めて出されるとの由。従ってここでの軽々な判断は控えておきたい。
今回は呼吸法が的確なプロ奏者の場合ではあるにせよ、全国無数の吹奏楽団にとっての目安ともなる試演会の意義は大きく、専門家の最終的な評価に注目が集まる。
取材・文:柴田克彦
シエナ・ウインド・オーケストラ
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