【SACD】R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」、「死と浄化(変容)」/ノット&東響

 一味違った味わいの名演と言うべきノット&東響のR.シュトラウス。この指揮者の手にかかると聴き慣れた有名曲ですら秘められていた「本質的な相貌」を顕にすることが多いが、「英雄の生涯」は冒頭から力みのないしなやかな響きを常に意識、和声感を重んじているようだ。と同時に多層的な各声部の明晰な抽出の手腕も見事なもので、全体と細部への目配せが二つながらに生きている。ソナタ形式とも捉えられる「死と浄化(変容)」もその構成を顕在化させるように演奏されていて、ともするとありがちな肥大や誇張とは無縁。微塵も通俗性の感じられない格調高い演奏にノットの見識と手腕を見る。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年8月号より)

【information】
SACD『R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」、「死と浄化(変容)」/ノット&東響』

R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」、交響詩「死と浄化(変容)」

ジョナサン・ノット(指揮)
水谷晃(ヴァイオリン)
東京交響楽団

収録:2018年12月、サントリーホール(ライヴ) 他
オクタヴィア・レコード
OVCL-00728 ¥3200+税