世界が注目する話題の俊英指揮者がふたたび登壇
東響の9月定期には一昨年に来日した俊英マクシム・エメリャニチェフが再登場する。
この人、数年来音楽界をざわつかせているクルレンツィス&ムジカエテルナで要の通奏低音を務めてきたのだが、指揮者としてもこのところメキメキと頭角を現している。古楽アンサンブル「イル・ポモ・ドーロ」の首席指揮者としてバロック・オペラなどに手腕を発揮、2017年にはグラモフォン賞、19年の国際オペラ・アワードでは新人賞に輝くなど躍進を遂げている。今シーズンにはスコットランド室内管の首席指揮者に就任したが、早々に契約延長が発表されるなど、期待にたがわない大物ぶりで、就任に先駆けて録音された同楽団との「グレイト」も評判は上々だ。筆者はニジニ・ノヴゴロド・ソロイスツ室内管(彼は同地の音楽院の出身)との「英雄」を聴いたが、透明な空気感の中を軽やかなテンポで駆け抜けるフレッシュな演奏で、洗練されたいで立ちが印象的だった。ロジェストヴェンスキーに指揮を学び、クルレンツィスと切磋琢磨――面白くないわけがなかろう。
さて、2度目となる東響との共演では、いよいよ鍵盤奏者としてもヴェールを脱ぐ。弾き振りに選んだ曲はモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。内省的な性格を強めていく作曲家像をどう描き出すか。この曲をハイドンの「太鼓連打」、ベートーヴェンの「運命」という二つの交響曲ががっちりと包み込む。古典派音楽のど真ん中をずばっと抉るプロだが、通り一遍の演奏では終わらなさそうなセンセーションの予感。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年8月号より)
*新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴う海外からの入国制限措置により、マクシム・エメリャニチェフの来日の見通しが立たないことから、現在代役を調整し公演開催へ向けて準備中です。(7/31主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
東京オペラシティシリーズ 第117回
2020.9/5(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp