田端直美(サクソフォン)

サックスと共に音楽の旅をお楽しみください

 オオサカ・シオン・ウインドオーケストラ(OSWO)のコア・メンバーで、ソリストとしても活躍する実力派サクソフォン奏者、田端直美が3枚目のソロ・アルバム『ウェニャン:ラプソディ』(マイスター・ミュージック)をリリースする。技巧的ながら豊かな歌心にも溢れたタイトル曲はじめ、多彩な時代の傑作を満載。「バロック、ロマン派、近現代と縦横無尽に駆け巡る、サックスでの音楽の旅をお楽しみいただきたい」と田端は言う。
 「最近、ソロのステージで取り上げる機会が多く、お客様からの評判も非常に高い」と軸に据えたのが、現代ベルギーのアンドレ・ウェニャンの佳品。田端はソロの出だしの第一音から耳を奪い、気品ある快演を聴かせる。
「アルト・サクソフォンの魅力を、最大限に表現できる作品。最初に収録を決めました」
 そして、マルチェッロのオーボエ協奏曲。ソプラノ・サックスでの演奏は、様式感がきっちりと踏まえられ、「バロック的な未知の楽器」で聴く不思議な感覚に。
「バロックが好きで、中でもお気に入りがマルチェッロ。音色はもちろん、ヴィブラートやアーティキュレーションも現代とは意識を変え、品格をもって演奏できるように心を砕きました」
 さらに、最重要レパートリーであるグラズノフの協奏曲も。ピアノ伴奏版での収録は珍しいが、「奏者2人のみの演奏は自由度が高く、互いの出方次第で自在に変化できる。室内楽的に音楽を進められるのが面白い」と説明。ピアニストの白石光隆とは、デビュー盤から共演している。
「音色の美しさには、いつも感動します。楽屋トークも最高(笑)。音楽に人柄は表れるものです」
 また、「ソプラノ・サックスならではの色彩感とダイナミズムが生かせた」という、ピアノ作品からの編曲のラヴェル「ソナチネ」、「ブラジルの熱気とけだるさが、自分にしっくりくる」というヴィラ=ロボス「ファンタジア」も収録。最後に「アンコール的な曲をと、昔から好きだった」というチマローザ「シチリアーナ」を添えた。
 ピアノ推薦で高校に進むも、サックス専攻で東京藝大・同大学院に進み、1923年創立の名門・大阪市音楽団(現OSWO)へ。所属楽団は2013年、市の直営から一般社団法人への移行を迫られて揺れた。
「地方公演が増え、ソロ活動を控えたこともありました。でもお陰で、全体での調和と個々を活かしての表現、双方の大切さが分かりました」
 後進の指導にも力を注ぎ、16年には日本クラシック音楽コンクールで優秀指導者賞を受賞。
 「若い世代は、奏者も聴き手も細分化し、各々の興味へ向かっている。この傾向はより強まるでしょう」と分析する。
「心の充足感や感動体験が求められる今、私たち演奏家次第で愛好者はもっと増やせる。音楽に奉仕し、仲間と息を合わせてしか成し得ない、最高の演奏を。そして、いつかは世界で、いや宇宙で演奏する夢を叶えたいです!」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年1月号より)

CD『ウェニャン:ラプソディ』
マイスター・ミュージック
MM-4047
¥3000+税
2018.12/25(火)発売