日本フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会2018 「第九交響曲」

平成最後の「第九」は2大マエストロのパッション漲る名演で

 今年の日本フィルハーモニー交響楽団の「第九」は、日本フィル桂冠名誉指揮者の小林研一郎と、情熱の指揮者、井上道義、日本を代表する二人のマエストロの登場が話題だ。
 井上は、抜群の統率力と求心力で、一期一会の演奏を大切にする指揮者。今回は、序曲「コリオラン」と組み合わせたベートーヴェン・プログラムで挑む。実は井上にとって、日本フィルは特別なオーケストラ。1976年に日本デビューした際に指揮したオケなのだ。その後はしばらく遠ざかっていたが、昨年の12月定期に続き、今年は九州公演(10都市)を指揮するなど、再び絆を深めている。「第九」のソリストは、テノールの錦織健ほか、井上と共演を重ねる実力派が揃った。合唱団は東京音楽大学(12/15)と日本フィルハーモニー協会合唱団(12/16)。「オーケストラは面白い!」と語るマエストロ。好奇心と探究心で目が輝く。そのひらめきに満ちたアプローチから、どのような演奏になるのか楽しみである。
 一方、“炎のコバケン”こと小林が指揮するプログラムは、厳かなバッハのオルガン曲(独奏:石丸由佳)で始まる。ソリストは、テノールの錦織のほか、ソプラノは安藤赴美子(12/21,22)と市原愛(12/25〜27)、アルトは山下牧子(全日)、バリトンは青戸知(12/21,22)、青山貴(12/25〜12/27)と豪華な歌手たちが集結する。こちらの合唱は東京音楽大学(12/21,22)と武蔵野合唱団 (12/25)、そして日本フィルハーモニー協会合唱団(12/26,27)。小林の渾身のタクトから生まれる歓喜や高揚、音楽との一体感は、まさに「コバケン・ワールド」。
 近年、音楽性を高め、進化を続ける日本フィルの、1年を締め括る演奏にも期待したい。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2018年12月号より)

井上道義(指揮)
2018.12/15(土)、12/16(日)(完売)

小林研一郎(指揮)
2018.12/21(金)、12/22(土)、12/25(火)、12/26(水)、12/27(木)

問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
http://www.japanphil.or.jp/
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。