イタリア屈指の名手カルボナーレが、盟友たちと2016年に結成したクラリネット・トリオのアルバム。前半のモーツァルト3大オペラ楽曲は、主にバセットホルンの温かい中低音域による3声のシンプルで心地よい響きが、かえって原曲の精妙な和声の陰影を浮かび上がらせ、演奏と曲のすばらしさに嘆息。ムードが一転する後半のジャズ・ナンバーでも羽目を外すことはなく、落ち着いて楽器の魅力を伝えている。それでもチック・コリアのノリ(35秒以上の超ロング・ハイトーンも!)、クレズマーの妖しい魅力や特殊奏法など、闊達な交歓と技巧もみせていて、音楽的かつ感興豊かな快演だ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2018年12月号より)
【information】
CD『モーツァルト!&ジャズ! /カルボナーレ・クラリネット・トリオ』
モーツァルト:《フィガロの結婚》より、《ドン・ジョヴァンニ》より、《魔笛》より/チック・コリア:ジャズ組曲/ナザレー&パスコアール&ジスモンティ:ブラジル物語/作曲者不詳:クレズマー組曲 他
カルボナーレ・クラリネット・トリオ
【アレッサンドロ・カルボナーレ ペルラ・コルマーニ ルカ・チプリアーノ(以上クラリネット/バスクラリネット/バセットホルン)】
ナミ・レコード
WWCC-7882 ¥2500+税