“鎮魂”と“祈り”
鬼才カンブルランならではのプログラムだ。20世紀イギリスを代表する作曲家であるブリテンの生誕100周年を祝して、読売日響常任指揮者カンブルランが、ブリテンの「ラクリメ」と「シンフォニア・ダ・レクイエム」を取り上げる。
「ラクリメ」は、「ダウランドの歌曲の投影」という副題のとおり、最後に16〜17世紀イギリスの作曲家ダウランドの旋律も引用される美しいヴィオラ作品。今や日本を代表するヴィオリストの一人となった同響首席奏者・鈴木康浩の独奏が楽しみ。「シンフォニア・ダ・レクイエム」は、日本政府が委嘱した皇紀2600年奉祝曲との関係で語られることが多いが、まだ作曲当時20代だったブリテンが、続けて亡くした彼の父母の思い出に捧げた作品でもある。「涙の日」、「怒りの日」、「永遠の安息を与えたまえ」の3つの楽章からなる管弦楽作品。カンブルラン&読売日響の名演が期待される。ウストヴォーリスカヤ(1919〜2006)は、20世紀ソビエト連邦の女性作曲家。ショスタコーヴィチに師事したが、独自のモダニズムを追求。ブリテンとほぼ同世代で、「シンフォニア・ダ・レクイエム」と同じく「怒りの日」を素材とした彼女の「コンポジション第2番」は興味津々だ。最後のストラヴィンスキーの「詩篇交響曲」は、新古典主義的な合唱つきの交響曲。世界のトップレベルの実力を誇る新国立劇場合唱団のハーモニーが聴き逃せない。宗教的な意味が込められた2つの20世紀の“交響曲”を並べるところが、いかにもカンブルランらしい。感動的な演奏会になりそうだ。
文:山田治生
(ぶらあぼ2013年8月号から)
第529回定期演奏会
★9月3日(火)・サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp