来年でリサイタルデビュー20周年を迎える三浦友理枝。高校3年生の時に臨んだ初リサイタルを振り返りつつ、20年近い歳月をかけて培ってきた音楽表現を届けようと、7月のリサイタルは大半がデビュー時と同じ曲目で、オールショパンプログラムにより展開する。子守歌、スケルツォ第4番、3つのマズルカ op.59、バラード第4番、ソナタ第3番などが並ぶ。傑作揃いだ。
「これらはすべてop.50番台です。この時期のショパンの作品はどんどん多声的になります。初期は美しいメロディと伴奏というスタイルだったのが、内声が増え、和音も肉厚となる。複雑でありながら、一音たりとも不用意には出せません。ジャンルも多岐にわたり、プログラムとしては緩急のバランスも良いですね。演奏にあたっては緻密に構成を練りますが、恣意的にならず、最終的にはごく自然に聞こえる表現を追求したい。新鮮な気持ちで楽譜と向き合い、デビュー当時の解釈やテクニックとは違った、今の私が持っている表現でお聴かせしたいと思います」
19年前のデビュー時は、「気弱で、ただただ真面目だった」と振り返る。
「思っていることを口にできず、準備したとおり確実にこなさねば! と必死に本番に臨むタイプでした。しかしその後、英国留学を経て、言葉でも音楽でも、自分のしたいことを明確に表せるようになりました。室内楽の経験や、音楽家同士でのディスカッションによっても自分の引き出しが増え、成長できたと感じています」
また、リスナーと音と言葉でコミュニケーションを図ることも、自分の音楽作りの大きなエネルギー源になることを知ったという。
「若い頃はコンクールの経験を引きずって、客席は自分の粗探しをしているのでは、と感じているところがありました。しかしリサイタルにわざわざ足を運んでくださる方々は、粗探しのためではなく、応援し、楽しみに来てくださっているのですよね。そんなことに気づくまで4、5年もかかってしまいましたが、今ではMCやサイン会を含め、お客様との交流を大切にしています。デビューの頃と変わっていないのは『作品の素晴らしさをお客様にお伝えしたい!』という熱意。そこだけはブレていません」
5月にはショパンのバラード&スケルツォ全集のアルバムをエイベックス・クラシックスより発表し、エレガントでありながら芯の強さを感じさせる、三浦らしいショパン像を提示した。渾身のリサイタル本番ではどんな音色で聴かせてくれるのか、期待が広がる。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2018年7月号より)
三浦友理枝 ピアノ・リサイタル
2018.7/27(金)19:00 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/
CD
『ショパン:バラード&スケルツォ』
エイベックス・クラシックス
AVCL-25964〜5(2枚組)
¥3000+税