シエナ・ウインド・オーケストラと切り拓く刺激的なフィールド
シエナ・ウインド・オーケストラのコンポーザー・イン・レジデンスに挾間美帆が就任・・・昨年アナウンスされたこのニュースは、我が国の吹奏楽シーンにとって近来屈指のトピックだったが、その刺激的マリアージュの成果を目撃できるコンサートが行われる。
“CROSSOVER”と副題にあるように、このコンサートは、指揮に原田慶太楼、サクソフォンに須川展也を迎え、挾間作品をフィーチャーしようというもの。当然プログラムには彼女ならではのポリ・ジャンル的作品が並ぶが、中でもまず注目したいのが吹奏楽版は初演となる「秘色(ひそく)の王国」だ。
「元はサクソフォンとピアノのための曲ですが、当初から大編成が頭にあったんです。それをシエナさんに話したところ、その場で須川さんに連絡してくださり実現することになりました。様々な楽器とサクソフォンの対話をお楽しみいただけると思います」
また「The Dance」は、最初バレエとのコラボのためにビッグバンド用として書かれ、昨年のラ・フォル・ジュルネでのシエナ出演に際し吹奏楽版に編曲された曲。
「これはビッグバンドの譜面を書いている時から、シエナの演奏も想定していました。ドラムなしでも演奏できるようなリズム・パターンを選んでいますし、ビッグバンドの即興部分も、書き譜で同じ楽器に演奏してもらっています。吹奏楽だと、演奏によりメリハリがついてドラマティックになりますね」
「タルカス」は、エマーソン・レイク & パーマーが1971年に発表したオリジナル曲を吉松隆が管弦楽用に編曲し、それをさらに挾間が吹奏楽にアレンジしたもので、初演は2012年、佐渡裕の指揮で行われた。
「当時いただいたのは、管弦楽版を吹奏楽に置き換えるというオファーでしたので、いかに吉松サウンドに近づけるかというチャレンジでした。吉松さんのスコアはかなり重厚で独特でしたので、勉強になりました」
一方プログラムの中で、唯一挾間作品ではないのが長生淳の「紺碧の波濤」だ。
「長生淳さんの大ファンなんです。この曲は、日本らしさの残るメロディ・センスと、豊かな和音やリズムの組み合わせが光る素晴らしい作品だと思います」
最後に、挾間にとってこのオーケストラはどのような存在なのかをきいた。
「音楽家として、ジャズやクラシックと他ジャンル音楽との架け橋になる作品をもっと広めたいし創りたいという大きな夢があるのですが、その挑戦に、共に意欲的に取り組んでいただける大切なパートナーです。今回のコンサートでも、吹奏楽ならではのジャンルの壁を超えた作品の数々を存分にお楽しみいただけると思います」
取材・文:藤本史昭
(ぶらあぼ2018年5月号より)
シエナ・ウインド・オーケストラ 第46回定期演奏会
〜CROSSOVER シエナ・ウインド・オーケストラ〜
須川展也×原田慶太楼×挾間美帆
2018.6/2(土)15:00 文京シビックホール
問:シエナ・ウインド・オーケストラ事務局03-3357-4870
http://sienawind.com/