《イル・トロヴァトーレ》で活躍するノーヴルなヴェルディ・テノール
この6月に初来日を果たす、イタリア・バーリ歌劇場。イタリアに13ある、国の支援を受けている名門歌劇場のひとつだ。1903年に開場し、デル=モナコやテバルディらが活躍して黄金時代を築くが、91年の火災で大半が損傷。2009年に再建され、美しい姿を取り戻した。以来イタリアでもトップクラスの公演を行っている。
今回の来日で披露される演目は《イル・トロヴァトーレ》と《トゥーランドット》の2つ。とりわけ前者は、豪華キャストで話題を呼んでいる。マンリーコを歌うフランチェスコ・メーリは、ロッシーニをはじめとするベルカント・オペラから出発し、今やイタリアを代表するヴェルディ・テノールへと成長。昨夏はザルツブルク音楽祭でムーティが指揮する《アイーダ》に出演、ラダメス役に初挑戦した。
「マエストロ・ムーティとは8作のヴェルディ・オペラで共演しました。最初マエストロは私の声を“優美なテノール”だと言っていましたが、今では“ヴェルディ・テノール”になったと言ってくれます。ラダメスを歌えたのは、ムーティ氏のサポートのおかげです。私の声は、かつて流行していたドラマティックなヴェルディ・テノールとは違います。けれど、ヴェルディは誤って扱われてきたのです。彼はベルカンティストであり、ヴェルディのテノールの役柄は、ヴェリズモよりドニゼッティのそれにはるかに近いのです。私はヴェルディのスコアをよく研究し、彼の書いた意図を探る努力をしてきましたので、彼が望んだ通りに歌っている確信があります」
ドラマティック・テノールの専売特許のようになってきた、《イル・トロヴァトーレ》のマンリーコ役はどうだろうか。
「マンリーコはリリック・テノールの役です。その直後に書かれた《椿姫》のアルフレードと同じタイプ。猛々しい戦士のように歌われるのは間違っています。スコアのマンリーコのパートには、ドラマティックなテノールにはできないことがたくさん書き込まれているのです。ただ、マンリーコは内面がドラマティック。その点が、ヴェルディらしさだといえるでしょう」
オペラでの来日は、14年のローマ歌劇場の来日公演以来4年ぶりだ。
「久しぶりに日本で、オペラ全曲を、それもマンリーコを歌えることになってとても幸せです。レオノーラを歌うバルバラ・フリットリさんはいい友人で、共演がほんとうに楽しみですし、ルーナ伯爵のアルベルト・ガザーレさんもとても尊敬している歌手です。マエストロ・ビサンティとはバーリ歌劇場でコンサートを行い、意気投合した仲ですよ。
ヴェルディは完璧な作曲家です。その場の状況を音楽で完璧に描き尽くせる、劇作家のような存在なのです。今一番大事にしている作曲家であるヴェルディの傑作に全力を尽くしますので、ぜひ聴きにいらしてください!」
取材・文:加藤浩子
(ぶらあぼ2018年3月号より)
イタリア・バーリ歌劇場
《イル・トロヴァトーレ》
2018.6/22(金)18:30、6/24(日)15:00 東京文化会館
6/30(土)15:00 びわ湖ホール
《トゥーランドット》
2018.6/23(土)15:00 東京文化会館
6/28(木)18:30 府中の森芸術劇場
6/29(金)18:30 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
7/1(日)15:00 フェスティバルホール
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