フィギュアスケートにちなんだ名曲を集めて
テノールの錦織健がフィギュアスケートをテーマにした名曲コンサートをバレンタインデーに行う。スロヴァキア室内オーケストラとは2001年の初顔合わせ以来、これが7回目のツアー。息の合ったアンサンブルでサン=サーンスの「ノッテ・ステラータ(白鳥)」(2016/17年 羽生結弦)、ニーノ・ロータの「ロミオとジュリエット」(11/12年 同)、プッチーニの《トゥーランドット》より〈誰も寝てはならぬ〉(06年 荒川静香・15/16年,17/18年 宇野昌磨)など、フィギュアにちなんだ人気の曲を熱唱する。
「スロヴァキア室内オーケストラとはコンサートだけでなく、現地で何度もレコーディングしていますが、とにかく真面目で練習熱心な人たちです。スロヴァキアはウィーンから車で1時間ぐらいの静かなところで、僕の故郷の島根に通じるメランコリックな陰影を感じました。ヨーロッパにはめずらしく控えめな人が多いのです。芸術監督で指揮とヴァイオリンを兼任するエヴァルト・ダネルさんは、そんな中でも珍しく陽気なエンターテイナーで、僕が今までに出したアイディアは全部『いいよ』と言ってくれました。しばらくバロックのレパートリーが続いたので、日本の歌はどうかという案もあったのですが、僕が『フィギュアスケートにちなんだ曲をやりたい』と言ったところ、すぐにOKが出たのです」
選曲と同時に、オリジナルなオーケストレーションを準備していく「手作り感」もこのコンサートならでは。東京オペラシティを含め全国で計6回の公演を行うが、「フィギュアで聴いた名曲」をきっかけにして、若い聴衆にも聴いてほしいと語る。
「フィギュアスケートと声楽は似ていると思うんです。たくさん練習をしても4回転ジャンプが失敗してしまうことがあるように、声楽も高音を出すことにはつねにリスクがともなうし、歌手は体力的にも精神的にもアスリートと同じ部分がある。この公演のポスターには、羽生結弦君や宇野昌磨君を大きく載せて、その下に小さく僕を載せたいと思ったほど(笑)。僕の歌だけでなく、スロヴァキア室内オーケストラの独断場となるインストゥルメンタル(公演の前半ではヴィヴァルディ「四季」全曲が演奏される)も聴けますし、東京公演はバレンタインデーに当たる日なので、イベントとして出かけてみるのもおすすめです」
テノール歌手としてのストイックな鍛錬と、持ち前のユーモア・センスで聴衆を確実に楽しませてくれる錦織健。オリンピックでスケーターたちが輝きを放つ寒い2月にホットなコンサートで心を温めてはいかがだろう。
取材・文:小田島久恵
(ぶらあぼ2018年2月号より)
スロヴァキア室内オーケストラ & 錦織 健
2018.2/14(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
※全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.japanarts.co.jp/