クリスチャン・レオッタ(ピアノ)

シューベルトはベートーヴェンの魂の後継者です

 欧米をはじめ、世界中の楽壇から熱い視線を注がれるイタリア人実力派ピアニスト、クリスチャン・レオッタが、京都府立府民ホール“アルティ”を舞台に、2018年の3月と11・12月に開催する全7回のシリーズ「シューベルト プロジェクト」を通じて、そのピアノ独奏作品の真髄に迫る。「作曲家の魂を、聴衆へ届けたい」。楽聖ベートーヴェンの“後継者”たる、夭折の天才作曲家への熱い思い入れと共に、若き名匠は語る。
「ベートーヴェンと同様、シューベルトの演奏も私にとって大きな使命です。彼のソナタは金字塔的作品にもかかわらず、なぜ全曲演奏が稀なのか、私には理解できません。このプロジェクトを通じて、ベートーヴェンの魂の後継者が誰であるか、一刻も早く伝えなければと思っています。その後継者が“彼”なのは、言うまでもありません」
 7歳でピアノを始め、バッハ演奏の権威ロザリン・テューレックに師事。今や「最も優れたベートーヴェン弾きの1人」と評される。22歳でベートーヴェンのソナタ全曲を演奏し、15〜16年には20回目となるツィクルスを“アルティ”で完遂。
「このホールの優れた音響空間だからこそ、全32曲の“内に秘められた声”を届ける強弱法の新たな可能性を発見できましたし、テンポ取りもより自由になれました」
 プロジェクトは、3月10日のソナタ第8、18番と「さすらい人幻想曲」のステージで幕開け。12月9日までの2ターム全7回に集中させる形で、14のソナタをはじめ、全21曲を披露する。
「作曲家の卓越した個性が伝わるよう、メリハリのついた選曲を心がけました。凝縮された時間の中で、壮大な作品群に対峙すると、作曲家の魂へより近づき易くなるはずです。お客様にも、私にとっても忘れ難い体験になるでしょう」
 シューベルトは「自分が人生を捧げるベートーヴェンに最も近い存在」であると断言する。
「彼の作品からは、いかに楽聖の音楽を勉強し、吸収したかが分かります。そして、どうベートーヴェンを演奏すべきか、明かしてくれるのです。シューベルトの師はアントニオ・サリエリ。その美しい旋律は、イタリア音楽の影響下にあるのは間違いないでしょう。これが、私がシューベルトに親近感を抱く理由の一つかもしれません」
 そして「シューベルトの音楽は、絶対的に純粋」と語る。
「演奏にあたっては、ピアニストであることを忘れ、ただ“音楽家”であるとだけ考えなければいけません。これは、彼の音楽の演奏がなぜ難しいか、なぜ聴く者を別世界へ誘うかの所以でもあります。演奏家は常に作曲家と聴衆を繋ぐ“媒体”でなければ。自分自身を完全に消すことなしに、作品に奉仕する強い精神を持ち、そのことでより輝いていけることが、私の演奏家の理想像です」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年1月号から)

ALTI開館30周年記念事業
クリスチャン・レオッタ シューベルト プロジェクト 7DAYS

1st stage 2018 
2018.3/10(土)、3/14(水)、3/18(日)

2nd stage 2018 
2018.11/27(火)、12/1(土)、12/5(水)、12/9(日)

京都府立府民ホール“アルティ”
問:京都府立府民ホール“アルティ”075-441-1414 
http://www.alti.org/
※2nd stageのセット券と1回券は2月発売予定。